COLUMN

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Out of Tokyo

111:Tokyo Week
小崎哲哉
Date: April 14, 2005

4月頭に『ART iT』が校了し、いくらかゆったりと過ごせるようになった。今月に入ってから観に行ったイベントを思い起こすままに挙げてみよう。

 

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ポスターその1

山口晃による春画のライブドローイング@トラウマリス。高嶺格、磯邉一郎、ウナ・ゼーマンの同時個展@高橋コレクション/山本現代/児玉画廊。『秘すれば花 東アジアの現代美術』&『ストーリーテラーズ』@森美術館。ローザス公演『ビッチェズ・ブリュー/タコマ・ナロウズ』@彩の国さいたま芸術劇場。加藤泉展@SCAI the bathhouse。松井冬子展@成山画廊。カールステン・ヘラー展@SHUGOARTS……。なんだか美術展が多いけれど、先週末には、ヨコミゾマコトの傑作「富弘美術館」の内覧会のために、4時間かけて群馬のわたらせ渓谷まで足を伸ばしもした。いずれも圧倒的に素晴らしかった。


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ポスターその2

やはり東京のカルチャーシーンは刺激的だ。その刺激にしばらく遠ざかっていた反動のためか、今回の『ART iT』の特集は「オールジャンル 日本のクリエイター180人」である。表紙は、1970年代の伝説的モデルにして、現在も宇川直宏や藤乃家舞らとパフォーマンスを行うオリエンタルビューティ、山口小夜子。新連載「妄想オーダーモード」を始めてもらった津村耕佑によるスタイリングで、撮影は松蔭浩之だ。特集扉は、いま業界が最も注目するダンサー、康本雅子を、広告界の雄、amanaの鈴木崇史が撮り下ろした。奮発してポスターを2種類つくったので、都内を中心に書店でお目に触れる機会があるかもしれない。紀伊國屋書店新宿南店では、16日の発売に先行して、4月1日から『ART iTブックフェア』を開催中。美女ふたりのポスターを早く見たければ、新宿へ走って下さい。

 

今回の特集の意図は単純だ。雑誌の冒頭に書いた文章を以下に転載する。

 

 昨今のアートフェスティバルが得てしてつまらないのは、「アート」の名の下に、あらゆるジャンルの表現者を取り込もうとするからだ。その際、ディレクターやキュレーターが「アート馬鹿」だと、つまらないどころか悲惨な結果に終わる。
 なぜ、表現者をひとつの場所に集めるのではなく、複数の目利きに各ジャンルの精髄を選ばせ、得意のフィールドに分散させないのか。朝は建築のシンポジウムを聞き、昼は美術展を観て、夜は舞台を楽しみ、一杯飲ってからクラブに繰り出す……なんていうほうが、巨大な会場を一日中歩いてくたびれはてるより、はるかに健康的で面白いに決まっている。
 そこで今号では、実際にイベントを主催、プロデュースした経験のある(あるいはいまも行っている)各ジャンルのプロフェッショナル10人に、東京と日本のリアルを体現するクリエイターを10組ずつ選んでもらった。そこらの雑誌がやりがちな単なる人物カタログじゃない。現場を知り抜いたプロ中のプロによる、現実のフェスティバルの誌上シミュレーションだ。企画書と思っていただいてもかまわない。
 いずれは実現してみせよう。とりあえずは、バーチュアルフェスティバルへようこそ!


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この不思議な写真の謎は、『ART iT』p.107とp.92を見ると明らかになる

というわけで、東谷隆司(アート)、ロラン・グナシア(映画)、ウニタモミイチ(演劇)、前田圭蔵(ダンス)、原雅明(音楽)、佐藤直樹(グラフィック)、津村耕佑(ファッション)、アルフレッド・バーンバウム(文学)、フレデリック・ボワレ(マンガ)、馬場正尊(建築)という10人に、100人(組)のクリエイターを選んでもらった。さらに、都内の有力ギャラリーが擁する注目すべき若手アーティストを約80人選出したから、合わせて180人というわけだ。「首都圏のグッと来るカルチャースポット」も7つほど取材してみた。


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ヒロ杉山とテイ・トウワ

4/16(土)には、写真家/評論家の港千尋さんとジュンク堂池袋店で対談する。4/27(水)には、誌上でも対談していただいたヒロ杉山さん&テイ・トウワさんと一緒に、紀伊國屋サザンシアターでトークイベントを行う。このふたり、ミュージシャンとVJとしてコラボレーションしているばかりでなく、アート作品を収集するコレクター仲間でもあるのだ。ふたりのコレクションなど、「お宝映像」も披露していただく予定なのでお楽しみに。また、5/14(土)には青山ブックセンター本店で、冒頭で触れたヨコミゾマコトさん、馬場正尊さんと、やはりトークセッションを開催する。いずれもRT Picksでご紹介するので、詳細を確かめた上、ぜひお出でいただきたい。

 

引用した文章に書いたように、いずれは本物のフェスティバルをやってみたい。そのために、実際に展覧会や興行をプロデュースしうるプロに選者になってもらったのだ。タイトルは仮に「Tokyo Week」としておこう。東京のカルチャーアクティビティの実力を、存分に楽しむ1週間というわけだ。トークは、言うなればその前哨戦である。

寄稿家プロフィール

おざき・てつや/『REALTOKYO』『Realkyoto』発行人兼編集長。1955年東京生まれ。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。趣味は料理。