COLUMN

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Out of Tokyo

097:CETについて I
小崎哲哉
Date: September 30, 2004
CET公式ウェブサイト | REALTOKYO
CET公式ウェブサイト

『セントラルイースト東京2004』(以下、CET)が終了した。2回目の今年の会期は9月18日から26日。前夜祭を入れて、ちょうど10日間の催しだった。あいにく『ART iT』5号の入稿とモロに重なったため、僕が行けたのは最終日の遅い午後だけで、観られた展示もわずかに過ぎない。そうお断りした上で、気がついた、あるいは思いついたことを記しておきたい。

 

東京R計画 RE-MAPPING TOKYO | REALTOKYO
『東京R計画 RE-MAPPING TOKYO』

まず何よりも、あれだけのイベントを短期間で実現させた力業に今年も驚いた。公式ウェブサイトとパンフレットによれば、参加アーティストはおよそ150組。会場となったビルなどの施設は、神田、お茶の水、浅草橋、馬喰町、日本橋、八丁堀エリアを併せて約45会場。オープニングとクロージングパーティはもちろん、シンポジウムが5つ、ワークショップがひとつ、ライブやAVパーティなどのイベントが8つ、パレードとファッションショーが3つ。Tシャツ、タオル、手ぬぐいなど、繊維問屋エリアという特性を活かしたオフィシャルグッズも制作・販売し、さらに晶文社からオフィシャルブックも刊行した。

 

広報宣伝活動も、まあまあだったと言えるのではないか。昨年同様、ポスターやパンフレットの仕上がりはぎりぎりだったらしい。それもそのはず、宣材などグラフィック周りの大半は、CETプロデューサーの佐藤直樹が率いるアジール・デザインが担当しているのだが、アジールの忙しさは業界人なら誰しもが知るところだ。ちなみに佐藤さんは『ART iT』のアートディレクターでもあって、今回は僕も泣かされました、ハイ(笑&泣)。

 

秋山曜子、伊藤桂司、福田忍 | REALTOKYO
左より秋山曜子、伊藤桂司、福田忍

新聞やテレビなどにも大きく取り上げられ、とりわけNHKに、仕掛人のひとり、RTでもおなじみの馬場正尊が大きくフィーチャーされた番組はインパクトがあった。最後のシーンは、閑散とした問屋街を馬場さんが歩いてゆくロングショットで、わずかな哀感が漂いつつも、明日に向けての希望が感じられる『プロジェクトX』ノリのつくりだった(かっこよかったよ!>馬場さん)。一方でデザイン系の雑誌やウェブマガジンにも、それなりに情報は行き渡ったと思う。

 

これだけの大イベントだから、行政や企業のサポートも欠かせない。地元商店街や町会はもちろん、都心4区ばかりか国土交通省などが協力、後援し、協賛企業には製紙会社やたばこ会社、不動産会社などが名前を連ねた。「街おこし」という側面があるだけに、単なるアート関連の催事よりもサポートは受けやすかったかもしれないが、それにしても事務方の苦労はたいへんなものだっただろう。運営を支えた多数のボランティアにも拍手。

 

と、評価した上でいくつか考えたことがある。「この先」はどうなるのか? 今後はどのように展開していくのか。それは、単に来年の『CET2005』を意味するのではない。

 

池田晶紀とできやよい | REALTOKYO
池田晶紀とできやよい

CETには大きく分けてふたつの目的あるいは性格がある。ひとつはもちろん、空洞化した都心の「街おこし」ということ。もうひとつは、その街おこしを「クリエイターや若者」(パンフレットより)に担わせること。世間がまず着目するのは、古い建築物の「R」(再生)という着想も含め、もちろん前者だろう。NHKや新聞など、マスメディアの報道ぶりを見ればそれは明らかだ。やや問題なのは後者で、「クリエイター」のジャンルは何かといえば、ウェブサイトを見ると「アート・デザイン・建築などの複合型フェスティバル」と記されている。佐藤や馬場らが、自身デザインや建築というバックグラウンドを持っているからだろうが、この枠は取っ払ってしまったらどうだろうか。

 

【この項、続く >> 097:CETについて II

寄稿家プロフィール

おざき・てつや/『REALTOKYO』『Realkyoto』発行人兼編集長。1955年東京生まれ。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。趣味は料理。