
ロンドンに1年ほど滞在していたFさんが帰国し、Sさん宅で久しぶりに会った。Fさんの手みやげは、2月15日の反戦デモの様子を自ら撮影したビデオ。史上空前、参加者100万とも200万ともいわれたデモだけに、地上の目線で撮った映像を見るだけでも、圧倒的な迫力があった。それにしても日本のマスメディアは、なんとおざなりな報道でお茶を濁したことか。歴史的な大ニュースだけに、単純にもったいない。
イラク戦争の大義名分だった「大量破壊兵器」は、まだ見つかっていない。それなのに(と言うべきか、そもそも予想されていたことと言うべきか)勝者米英は、「それは大した問題じゃなかった」と開き直っている。英国でストロー外相がどう言ったかについて、日本語で読めるものとしては『先見日記』の港千尋レポートが非常にわかりやすい。さすがにまずいと思ったのか、米英両国ともに、情報の真偽調査に入ったというニュースが流れている。お手並み拝見。
さてONWARとWASPについて、「もう終わったんですか?」という問い合わせが編集部に寄せられている。答は簡単、「まだまだです」。だって戦争は終わってないもの。パレスチナでもインドネシアでもチェチェンでも人は死んでいる。「主要な戦闘は終結した」というイラクでも、小さな戦闘は終わっていない。それに「終結」しようとしまいと、「大義なき戦争」について思考放棄しちゃあダメでしょう。気に入らない奴を倒そうと思ったら、適当な言いがかりを付けてとりあえずやっつければいい、勝てば官軍。そんな風潮をはびこらせるなんて、とんでもないと思う。

だから両プロジェクトとも続けますが、困ったのはWASPなんだよねえ。何せ、自らの作品投稿を条件に審査員をお願いした諸氏が、駿東宏さんを除いて誰も投稿してくれてない。皆さん忙しい方ばかりだから、ある程度は予想していたとはいえ、かなりサミシイ。そこで思いついたのが厳格な締切の導入ですね。毎月月末、などと甘いことをいっているからいつまでも作品をつくってもらえない。とりわけグラフィックデザイナーという人種は(物書きもだけど)「締切」「納期」というのがきちんと設定されないと一歩も動かない。その事実を忘れていた僕が馬鹿でした。
で、せっかくだから、どこかで公開審査&作品発表を兼ねたRT BARを開こうかと思っている。「審査」について、グラフィックデザイナーの永原康史さんに「審査することは、少なくともコミュニケーション上の権威を持つことだ」というご批判をいただいた(『Web Designing』2003年5月号)。たぶん、当初の説明文が舌っ足らずだったから混乱が生じたのだと思う。あらためて書いておけば、投稿作品はまず、応募規定に合っているかいないか、企画趣旨に合っているかいないか、一般に開かれているメディア(RT)に掲載しても問題がないかどうか、の3点について編集部がチェックを行う。その上でウェブ上に発表し、一定期間を経た後に、審査員が互いの協議なしに「自分がよいと思う作品」を選考する。賞金・賞品はいっさいなし。与えられるのは各審査員の「絶賛の言葉」のみ。
だからいわゆるエラソーな「審査」とは全然違う。編集部チェックによって落とされた作品はこれまで1作もないし(企画趣旨に合っていなかったので、趣旨を説明し直し、つくり直していただいいたものはある)、審査員による選考も、モチベーションを高める(というか盛り上がる)ためにはすごくいいんじゃないか、と考えている。
とうわけで近々、場所が決まったらRT BARを開きますね。ふるってご来場下さい。そうだ、その前に……。その日までにはぜひ傑作をつくって応募して下さい。締切は守れよー!>審査員の方々
寄稿家プロフィール
おざき・てつや/『REALTOKYO』『Realkyoto』発行人兼編集長。1955年東京生まれ。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。趣味は料理。