COLUMN

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Out of Tokyo

056:WASP
小崎哲哉
Date: February 13, 2003
WASP | REALTOKYO

ご存じの通り、イラクと米国(及びその同盟国)との間が一触即発状態になっている。ここ極東の島国においては、過去の類似ケースの例に漏れずマスメディア報道が貧弱なためか、関心も現実感も非常に薄い。2月15日には世界各地で「同時多発反戦デモ」が開催される予定で、とりわけ主戦派の政府(ブレア政権)と非戦派の国民とがまっぷたつに割れている英国では、とんでもないことになるんじゃないかという予想もある。なのに、ねえ‥‥。

 

こういうときに弱小ウェブサイトに何ができるかを考えてみた。

1:ロンドンに行ってデモに参加する。

2:何もしないで知らんぷりを決め込む。

3:人様のお力にすがってでもいいから何かする。

 

WASP | REALTOKYO

1はなかなかいい考えなんだけど、休みが取れないからパス。2は、まあ楽チンではあるけれど、やっぱり男が(女も)すたる。ここはやっぱり3! ということでひらめいたのが次のふたつのアイディアだ。まず、大小問わず、ほかのウェブサイトに声をかける。次に、プロアマ問わず、RTの読者に声をかける。いやあ、友だち(というか声をかけられる人)がいるって、本当にいいもんですね。ひとりじゃ何もできない。

 

ほかのウェブサイトの方々にお願いすることは非常にシンプルだ。複数のウェブサイトがゆるやかに連動して、「戦争を考える」という特別企画を行う。まず第一のポイントは「ゆるやかに」という点で、シバリは、連動する各サイトがリンクを張り合うことだけ。共同声明を出すような大仰なことはしない。次に大切だと思うのはテーマそのもの。「戦争に反対する」ではなく「戦争を考える」。僕は個人的に「反戦」の立場だが、極論すれば「戦争賛成」だってかまわない。今この時期に何よりも大切なのは、複眼的な情報収集も含め、各人が深く「考える」ことだと考えるからだ。

 

そしてRT読者への提案は以下の通りである。企画書風に記しますね。

 

<ウェブ上の広告展『WASP (War As Sales Promotion)』参加のお誘い>

 

●企画意図

WASP | REALTOKYO

現代において戦争を起こすにはさまざまの理由があるでしょうが、特に昨今の戦争では、1:古い武器の「在庫一掃」を図る。2:新しい武器の「セールスプロモーション」を行う。このふたつの目的が大きいといわれています。とりわけ後者は、自国以外に武器を販売することにより、戦勝による直接的利益以上の旨みを軍需産業に、ひいては税収として国庫にもたらすので、主戦論者の大きなモチベーションのひとつになっているといえるでしょう。本展は個別の武器や、戦争を主唱する人材などをプロモートするための「広告」を広く募集し、展示することにより、現代資本主義社会における戦争と武器の重要性を、あらためて世に知らしめることを目的とするものです。

 

●企画概要

武器や戦争を主唱する人材をセールスプロモートするための広告を募集し、審査委員の選考を経て、REALTOKYO上の特別ページで発表する。広告はグラフィック(ポスターA判あるいはB判を縮小)、映像(15秒あるいは30秒を圧縮)、バナー(486×60ピクセル)の3種とし、いずれも電子ファイルで送信するものとする。

 

●審査結果

優秀作品には賞金も賞品も与えられないが、その代わりに審査委員からの「絶賛の言葉」が贈られる。審査委員自身による応募も自由。審査委員は決まり次第お知らせしますが、かなりのビッグネームが名前を連ねる予定です。

 

……とまあ、こんなような内容だけれど、いかがでしょうか。ヤボな人のためにあえて書いておくと、「現代資本主義社会における戦争と武器の重要性を、あらためて世に知らしめることを目的」と書いたのはあくまでもパロディであり、本音はもちろん「戦争の隠された意図のひとつを明るみに出す」ことにある。ふるってご参加ください。

寄稿家プロフィール

おざき・てつや/『REALTOKYO』『Realkyoto』発行人兼編集長。1955年東京生まれ。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。趣味は料理。