
REALTOKYOについてのレクチャーを行ったときや、RT BARなどのイベントの際に、「ところでRTは、どんなビジネスモデルでやってるんですか」と訊かれることが多い。「ビジネスモデル」という言葉は僕は嫌いだから使わないけれど、要するにサイトを維持するためにどこからどのように収入を得ているか、という問いである。もちろん正直に「広告やペイドパブがほとんど。それに加え、他媒体への情報アウトソーシングの対価と、REALOSAKAからのシステム使用料が少々」と答えている。
といってもこういうご時世だから、実はかなりかつかつでやっている。スタッフへの薄給と、何らかのバーター以外の原稿料は安くても支払うという方針で臨んでいるけれど、発行人兼編集長である僕自身の(RTからの)収入は今のところゼロ。最近になってまたもやアクセス数が急増してきているから、スタッフともども豪遊できる日も近いかとは思うが、もう一歩である。

だから自分自身が生きてゆくためには、ほかの方法で生計を立てねばならない。とはいえ僕は幸運に恵まれていて、気が進まない仕事はほとんどやったことがない。現在やっている仕事も、すべて喜んで引き受けたものばかりだ。先ごろスタートさせたウェブサイト『先見日記』も、そんな楽しい仕事のひとつである。以下、宣伝をさせていただく。
『先見日記』は株式会社NTTデータの企業活動の一環として始められた。NTTデータは、Insight for the new paradigm、つまり「新しい思考の枠組み=多様な価値観に向けての先見・洞察」というスローガンを掲げていて、要するに「未来へのヒント」をさまざまなかたちで探ろうとしている。その趣旨に賛同し、先見の明がありそうな5人の書き手を選び、月曜日から金曜日まで日替わりで日記を書いてもらおうという企画である。日本語が読めない読者には申し訳ないが、当面は日本語だけだ。

月曜担当は月刊アスキー編集長の遠藤諭、火曜は作家の片岡義男、水曜は「蛍ちゃん」こと女優の中嶋朋子、木曜は評論家で写真家の港千尋、そして金曜はル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版発行人の斎藤かぐみ。以上5氏がそれぞれの見聞をもとに、日記を書く。原稿は当日締切だから、ほぼリアルタイムに5氏の「先見・洞察」をお読みいただける。これまでのところ、どれも非常におもしろい。
メールマガジンには「Staff’s Diary」というコーナーを設け、僕自身もときおり「日記」を書くことにした。またメルマガには、やはり「未来へのヒント」になりそうな海外ニュースを掲載している。そこで気づいたことがふたつ。(1)「未来へのヒント」を意識すると「現在」が違うかたちで見えてくる。(2)当然といえば当然だが、「未来へのヒント」はあまり多くはなく、世界は暗いニュースに満ちている。そうはいっても、もちろん明るい兆しはある。たとえばメルマガの第2号で紹介した、「コーサ語、ズールー語、ヴェンダ語など6カ国語にローカライズされた無料のMozillaブラウザー」は、アフリカのIT事情を劇的に変革するだろう。ディジタル・ディバイドを乗り越えるための一里塚だと評価できる。
そんなニュースを紹介しつつ、5氏の卓見を毎日掲載したい。皆さんもご愛読のほど、よろしくお願いします。
寄稿家プロフィール
おざき・てつや/『REALTOKYO』『Realkyoto』発行人兼編集長。1955年東京生まれ。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。趣味は料理。