
まず最初にお断り。最近、REALTOKYO サーバーがハッカーの攻撃対象になっている模様だ。サーバーに何者かが不正アクセスをして、外部サーバーを攻撃するプログラムを置いたらしい。実際に、アクセスしづらくなって首を傾げた方々もいらっしゃるかもしれない。元凶となっているプログラムは技術スタッフがすでに除去したので、これ以上の被害は出ない(と願いたい)のでご安心下さい。

閑話休題。初台の東京オペラシティアートギャラリーで開催されている、ダグ・エイケンの巡回展『ニュー・オーシャン』がすごい。大都市の夜景を俯瞰したライトボックス作品など一部を除くと、いずれも「水」を直接の題材とした映像作品で、方形や円形のスクリーンはほとんどが複数個組み合わされ、そこに映し出される映像は圧倒的な迫力を持っている。僕はとりわけ、東京展のためにつくられた新作『window 2』と、順路の最後に置かれた『new ocean cycle』に感動した。
前者は円形のスクリーンふたつを直交させて吊り下げ、風景の中に置かれたやはり円形の白いパネルにレンズがフォーカスインすると、革張りの太鼓のような音がパンと鳴る。後者は、直径10メートルほどのパノラミックな360度スクリーンに波や滝などの映像が映し出され、上を向くと円形スクリーンに水中を泳ぐ少女らしき人影が見える、文字通り「圧巻」と呼ぶべき作品だ。

作品には迫力があり、テーマは明快で、被写体はほとんどが見ていて気持ちがよいものだ。だから展覧会は成功を収めるのではないかと思うが、美術館サイドは心配だったのか、あるいはたんなる偶然か、9月8日(日)まではギャラリー開館3周年を記念して、入場料を50%オフにするという。さらには(他の割引との併用はないが)、同じオペラシティ内にあるICCで開催中のダムタイプ『ヴォヤージュ』展が、半券提示で割引になり、逆に『ヴォヤージュ』展の半券を見せれば『ニュー・オーシャン』が割引になる。

集客のための涙ぐましい努力、といえばそれまでかもしれないが、経理処理や窓口での対応など、内部的にはさまざまな問題を検討・解決した上での「英断」と呼ぶべきだろう。一般1000円という入場料が高いかどうか、その半額500円にお値頃感があるかないか、論議は分かれるところかもしれない。とはいえ僕はこの割引を無条件で歓迎する。ダムタイプとダグ・エイケンとの間にほとんど関連性はないだろうが、同じ建物の中にあるふたつの美術館が、提携して割引するのは悪いことではない。初台って新宿から近い割に、京王新線に一駅乗るのが意外に心理的に敷居が高く、どうせならまとめて2館観たいと思う人が多いだろうから、これは僕だけの意見ではないはずだ。
映画館では、雑誌『ぴあ』が音頭取りをして、渋谷にあるミニシアター6館で使える「ミニシアター回数券」を発売している。参加する映画館は当初から比べると減ったけれど、そこには様々な事情があるのだろう。自由競争が原則なのだから、もちろん参加してもしなくてもよい。下に書くこととやや矛盾はするけれど、地域が同じと言うだけでひと括りにするのは勘弁してくれ、という映画館もあるだろう。
ただ──パフォーミングアーツの劇場なども含め──この種の提携はもっと増えてもよいのではないか。東京オペラシティアートギャラリーとICCの場合には「場所(建物)」による提携だが、同じ場所でも「地域」が一緒だとか、アーティスト(スタッフやキャスト)が共通しているとか、テーマに関連性がある等々、理由はいくらでも考えられる。とりわけ共通テーマを持つ異ジャンルイベントの同時期開催の際には、以前にも指摘したように(「008 遠い中東」)、割引以前にメディアミックスの観点からも意味がある。カルチャー関連施設の共通パスをつくれとまでは言わないが、この種の提携はどんどん進めてほしいと思う。
Photo: new ocean 2001 Produced by the Fondazione Sandretto Re Rebaudengo, Turin, presented in association with the Serpentine Gallery, London
Courtesy of the artist, 303 Gallery, New York, Victoria Miro Gallery, London and Gallerie Hauser & Wirth & Presenhuber, Zurich
photo (c) : Stephen White
寄稿家プロフィール
おざき・てつや/『REALTOKYO』『Realkyoto』発行人兼編集長。1955年東京生まれ。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。趣味は料理。