COLUMN

outoftokyo
outoftokyo

Out of Tokyo

040:Realなコミュニケーション
小崎哲哉
Date: June 27, 2002

僕は編集者としてのキャリアがある程度長くて、先輩たちから「裏方に徹しろ」という教えをさんざん聞かされてきた。好奇心はあるからインタビューをすることなどは好きだけれど、あくまでも「聞き手」に徹することの方が多かった。でもこれからは、「対談」という形で、「表」にも出ようかと思いはじめている。

 

理由のひとつは、『REALTOKYO』の知名度アップだ。おかげさまでページビューは創刊以来ずっと右肩上がりだけれど、巨大サイトとはいいがたい。もちろん、必ずしも大きなサイトになる必要はないし、むしろ「読者の顔が見える」くらいの規模がちょうどいいのだろう(実際には見えませんけどね)。とはいえ、もう少し記事が読まれ、もう少しスケジューラーが利用され、もう少し掲示板が活性化してもいいと思っている。広告宣伝費を捻出する余裕はないから、自分が小さな小さな宣伝塔になろうというわけだ。

 

もうひとつは、ウェブサイトづくりばかりに専念していると、リアルな感覚が消えてしまうんじゃないかという恐怖心があるからだ。試写会やプレス内覧会や実際のイベントに足を運ぶことはある。上に書いた「聞き手」という立場で、自分が興味を抱いた方にお会いすることもある。でも、それだけではなんとなく不安が残る。読者の方々のリアクションをもっと知りたいと思うのだ。

 

小池博史氏(パパ・タラフマラ)とのアフタートーク | REALTOKYO
小池博史氏(パパ・タラフマラ)とのアフタートーク

そこで、来月くらいから、RTが主催、あるいは共催する公開イベントをいくつか開こうと思っている。タウン欄に情報を載せたけれど、佐野元春さんやいとうせいこうさんとの公開トークイベントもそうだ。佐野さんとの対談は雑誌『インターネットマガジン』に連載するシリーズ「インターネットの彼方へ」のためのもので、いとうさんとの対談はこのコラムの「035」に書いた『百年の愚行』のプロモーションの一環。でも、RTの読者にもぜひ来てもらいたいと思っている。

 

それ以外に、「REALTOKYO BAR」と称するイベントも開くつもりだ。以前に「メディエーター」として声をかけていただいた、オータショーコさん主催のイベント「Cafe o'le」のアイディアをパクるような感じだけど(多謝!>オータさん)、もちろんRT的な色を付けて、毎回クリエーターをゲストとして呼ぶようなプランを検討中だ。定期的に開催できればなおいいだろう。決まったら告知するので、皆さん、リアルな場所でお会いしましょう。

 

一方で、読者の方々からの反応も、もっともっと聞いてみたいと思っている。プレゼントに応募してくる方々の感想やコメントはとてもうれしいし、実際に役立つこともある。でも僕らのサイトは、いわゆるマーケティング的なデータを取るために読者調査を行ったことは、たった1回しかない。スケジューラー登録をしていただく際にアンケートを用意しているけれど、あれは強制的・義務的なものではない。プライバシー侵害をしたくないのはいうまでもないし、そもそもあんまり敷居を高くすると利用したくなくなるというのは、自分自身もそうだからよくわかる。

 

でも、これも近々、(もちろん任意で)お願いすることになるかもしれない。広告出稿を考えている企業(主にカルチャー関連企業)が読者の嗜好を知りたがっているということもあるけれど、僕ら編集スタッフだって知りたい。どんな映画が、アートが、音楽が、演劇が好きか。どんな記事を読みたいか。そういった質問の回答からのフィードバックがコンテンツづくりに活かせれば、とてもよいかたちの循環が生まれると思う。

 

とにかくキーワードは「Real」だ。弱小サイトの運営は厳しいけれど、まだまだ楽しいことを続けていきます。応援して下さいね。

寄稿家プロフィール

おざき・てつや/『REALTOKYO』『Realkyoto』発行人兼編集長。1955年東京生まれ。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。趣味は料理。