
編集者で写真家の都築響一とウェブデザインを扱う雑誌で対談をした。『REALTOKYO』と、都築が12月10日にはじめた『インターネット・ミュージアム・オヴ・アート』(略称IMA)を比較しながら、最近のウェブデザインの傾向についてお小言を申し上げる(?)という企画である。詳しくは雑誌(『Web Designing』2月号:2002年1月18日発売)をご覧いただきたいが、IMAのコンセプトがとても面白かったので紹介したい。

http://www.so-net.ne.jp/ima/
IMAとはその名の通り、インターネット上に開館された美術館だ。キュレーションを都築が行い、毎月1人ずつアーティストとその作品を紹介してゆく。第1回は都築本人の『賃貸宇宙』。第2回は大竹伸朗の『落合ダブ平商店』。以後、宇川直宏、やなぎみわ、束芋などのアーティストが毎月登場し、次の「企画展」がはじまると前月までのものは「常設展」としてアーカイブ化されるという。いずれは「ミュージアムショップ」も開設されるというから楽しみだ。
ウェブ上の美術展という試みは以前にもあったけれど、IMAについて特筆されるべきは「入場料」を取るという点だろう。1回700円で、72時間のあいだ何回でも「入館」することができる。収入の半分はアーティストに還元されるというから、これは現実の美術館、美術界のありように対する異議申し立てであるとも言える。もっとも、人気(評価ではない)が収入に直結するのだから、アーティストにとってはシビアなシステムでもある。

http://www.digi-kishin.com/
写真家の篠山紀信も、12月1日に『digi-KISHIN』を立ち上げた。ヌード作品のストリーミング配信サイトで、静止画だけでなく一部動画も含んでいる。こちらも有料(たとえば1ショット1週間で300円、1カ月見放題で1500円)だが、1.5MBのADSLで見る限り画質はまあ合格点だし、清水靖晃らが映像に付けた音楽もすばらしい。ヌード写真をダウンロード配信するサイトはすでに多数あるが、ブロードバンド時代に対応した、時宜を得たサイトだといえるだろう。
アートとヌード。載せられているコンテンツはだいぶ違うが、「見せたい・見られたい」という強い欲望に基づいたウェブサイトという点で、両者に共通点はあると思う。都築のサイトはSo-netという大手プロバイダー、篠山のサイトは小学館という大手出版社がバックアップしているからこそ、クレジットカードによる少額決済が可能になったわけだろうが、「ウェブコンテンツは無料」という不文律的な趨勢に一石を投じたことは大きい。
「ウェブコンテンツは無料」という考えは、米国西海岸に端を発する悪しきイデオロギーだ。「きちんとつくられた商品にお金を払うというのは資本主義社会の鉄則だ」という点で、都築と僕は意見の一致を見た。デジタルデバイドを解消するためにインフラ的なフリーウェアの配布は必要だろうが、娯楽度の高いコンテンツは有料でもかまわないのではないだろうか。無料であるからこそ無責任で質の低いコンテンツがはびこっている。ウェブカルチャーの健全な発展のために、有料コンテンツがもっともっと増えてもいいと思う。
寄稿家プロフィール
おざき・てつや/『REALTOKYO』『Realkyoto』発行人兼編集長。1955年東京生まれ。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。趣味は料理。