

2000, Berlin, Germany
Courtesy Lenono Photo Archive
一般公開前日の9/1に、横浜トリエンナーレ「メガ・ウェイブ 新たな総合に向けて」の内覧会に行ってきた(11/11まで)。展覧会の内容については今後、(心あるメディアと書き手によって)囂々たる非難がわき上がることだろう。いちいち名前は挙げないが、よく言って自己言及的、はっきり言って他者の作品をも含めた過去の遺産に寄りかかっている作品が多すぎ、志も一貫性もないこと甚だしかった。テーマは「(鑑識)眼が動揺している」とか「大いなる揺れ」とでも訳すのが妥当ではないか。
まあ、これだけ大きな展覧会ともなれば、見本市的性格が強くなるからそれも仕方がないかもしれない。しかし、制作サイドのミスによるトラブルは見過ごせない。ひとつは、会田誠の「パンチラ川柳」のひとつが、内容が不謹慎であるという理由で削除されたこと。もうひとつは、村岡三郎の塩を用いたインスタレーションが「塩害が心配」という何とも情けない理由で撤去されたこと。会田なら不謹慎な川柳の一句も書くだろうし、村岡が塩を素材として用いるのは初めてではない。キュレーターも事務局も何をやっているのか。
オノヨーコの、ドイツ国鉄の車両に弾痕と思われる穴をあけた作品も、オマージュというよりはモルデカイ・アルドン『数字の列車』の40年遅れのパクリとしか思えなかった(Out of Tokyo 008参照)。野外に置かれていたということが、唯一の長所だろうか。天井にあけられた穴からレーザー光線が天空に投射され、美しいことは美しかった。だがサイトスペシフィックな意味合いはまったくない。

発行人:小沢剛 編集人:新川貴詩
僕がよいと思ったことはふたつある。ひとつは、サブ会場の県民ホールギャラリーで開かれている小沢剛の『トンチキハウス』(9/15まで)。
メイン会場のパシフィコ横浜が権威臭を芬々と漂わせているのに、こちらは畳敷きにちゃぶ台、手作りの座布団に、子どもたちがつくった「ひみつキチ」(塚本由晴指導)という超なごみ空間である。連日開催されるワークショップは、ほとんどアジアの若衆宿の宴会を想わせる。『トンチキ新聞』といういかにもいかがわしい新聞も刊行されており、胡散臭いトリエンナーレの「権威」を笑い飛ばすのに一役買っていた。
もうひとつは、第二会場の赤レンガ倉庫前の広場で行われたウェルカム・パーティー。赤レンガ倉庫内の展示は、映像系・メディアアート系にまとめてあり、古い建物というロケーションのよさにも助けられてなかなかいい感じだったが、生西康典のVJもかなりご機嫌だった。野外での潮風に吹かれてのパーティーは格別である。横浜市は倉庫のひとつをショッピングモールにするという噂があるが、そんな間抜けな計画は廃案にして(ついでにトリエンナーレもやめて)、連日倉庫前でパーティーを開いたらどうだろうか。暴論? 無理? 無理だろうなあ、やっぱり。
寄稿家プロフィール
おざき・てつや/『REALTOKYO』『Realkyoto』発行人兼編集長。1955年東京生まれ。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。趣味は料理。