COLUMN

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Out of Tokyo

013:鎖国から開国へ?
小崎哲哉
Date: June 06, 2001

5月22日、有楽町の日本外国人特派員クラブで、ロベール・メナールを囲む昼食つき講演会があった。表現の自由を謳い、権力によるメディア弾圧を非難する「国境なきジャーナリスト(RSF)」の代表である。メナールは「90年代には1000人以上のジャーナリストが命を失った」「ラングーンでは現在、40人が獄中にある」「中国では反体制ネット活動家が何人も逮捕されている」等々、豊富な実例を挙げ、日本のメディアに「義務」を遂行するよう要望した。曰く、拘禁されたジャーナリストが釈放されるまで、事実について語り、書き続けること。読者や視聴者に働きかけ、物心両面の援助を呼びかけること。メディア自身も、医療費やジャーナリストの家族の生活費など、物質的な支援を行うこと。

 

CNNのディレクターと、ビルマの反体制新聞記者と、日本のフリーランス・カメラマンとでは、主義主張も、拘束された際に期待できるサポートも異なる。だから立場や背景が違うジャーナリストを、ひとまとめに括ってしまうのはどうかと思うし、RSFの狙いのひとつに、(最悪の不景気であるとはいえ)金満国家のカネがあることは間違いないだろう。けれどもメナールの講演から、僕はふたつのことを学んだ。1 ジャーナリストの取材活動は、ある局面では文字通りの「戦争」である。2 日本は世界に対していつまでも閉じていることはできず、今や情報面での「開国」を迫られている。

 

Report 2001 | REALTOKYO
Freedom of the press throughout the world 'Report 2001'

とりわけ2は重要であると思う。ちなみに言えば「開国」を促す呼びかけはメナールからのものだけではない。前回のこの欄で触れたメディア・アクティビストのヘアート・ロフィンクから、『nettime』の日本版をつくらないかという打診が、筆者の周辺に寄せられている。『nettime』はロフィンクが主宰する、NPO的なメーリングリスト。提案を受け、複数のジャーナリスト、アーティスト、編集者らが、実現に向けて動いている。日本語でネット文化や政治やアートを議論する一方、英語のサマリーも定期的に刊行する予定だ。

 

『nettime』日本版については、あらためて報告する機会もあるだろう。ともあれこの国のメディアは、内側にばかり目を向けていて、国際的な発言・主張を行ったためしがほとんどない。外で何が議論されているかということも報道しないから、内側の読者・視聴者も悪循環的にオバカさんになるばかりだ。イチローや新庄の活躍が見聞きできるのはうれしいけど、それだけが国際ニュースであるという勘違いはしないでほしい。少なくとも僕は、もっと海外の動きを知りたいし、国内の動きを外に知らせたいと思う。

寄稿家プロフィール

おざき・てつや/『REALTOKYO』『Realkyoto』発行人兼編集長。1955年東京生まれ。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。趣味は料理。