

4月19日、初台のNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)が、半年あまりの休館期間を経て生まれ変わった。改装後の床面積は以前の半分、常設展示作品はわずかに3点のみ、キュレーターは3人という実にスリムな態勢になったとのこと。この方針に疑問の声はあるが、リニューアル・オープニング企画展のスタジオ・アッズーロは悪くなかった(前林明次作品は残念ながら未体験。アッズーロについて、詳しくは4/30の週にアップされる五十嵐太郎さんの「Tokyo, 4 Weeks」を読んでほしい)。
僕は休刊した日本版『ワイアード』誌で、当時のICCの運営体制を批判的にレポートしたことがある(98年8月号「迷走する電子アート・ミュージアム」)。ヨーロッパにあるふたつの同種施設、オーストリアのアルス・エレクトロニカ・センター(AEC)およびドイツのカールスルーエ・アート&メディア・テクノロジー・センター(ZKM)と比べてのもので、かいつまんで言うと以下のような点を指摘した。
1 館長(NTT本社から出向)がアートの門外漢であり、権限も少ない。
2 企画立案に関与する人数が多すぎ、意思決定が遅い。
3 以上ふたつの理由から企画・活動内容に一貫性がない。
4 決算、人事異動が毎年あり、長期的展望を持ちにくい。
5 NTT本体の分割・再編に伴い「お荷物」となる可能性がある。
誉めるべきは誉めましたよ。プレ活動には一貫性があったとか、未紹介だった最先端のアーティストや理論家を招聘したとか、『季刊インターコミュニケーション』など出版企画は意欲的だったとか。だが、指摘が的を射ていたのにもかかわらず、いや、たぶん正鵠を射すぎていたからなんだろうけど、NTT/ICCの方々はすばらしい反応で応えて下さった。『ワイアード』への広告出稿を中止し、『インターコミュニケーション』に書くはずだった僕の原稿を掲載拒否したのである。いかにも我が国を代表する巨大企業らしいリアクションに、呆れ果てる以前に苦笑が漏れた。
でも今回のリニューアルは悪くないと思う。館長に代わる「新責任者」はなんと非常勤で「皆様に日常的にお目にかかる機会はほとんどない」(オープニング・レセプション司会者の弁)。予算はきっと激減したんだろうけど、船頭が少なくなって、以前よりははるかにのびのびと、一貫性ある企画展開ができるんじゃないか。そういえばレセプションの出席者は、4年前の開館時と違ってネクタイ&スーツ族が少なく、これにも好感が持てた。
そもそも非常に日本的な体質の私企業が運営するミュージアムが、自治体が深く関与するAECやZKMを目指そうとしたのが間違いだったのだと思う。小ぶりになったということは小回りがきくということだ。3人しかいないキュレーターはたいへんだろうが、メディアアートを扱う数少ないミュージアムとして、今後の展開を期待している。
寄稿家プロフィール
おざき・てつや/『REALTOKYO』『Realkyoto』発行人兼編集長。1955年東京生まれ。京都造形芸術大学大学院学術研究センター客員研究員。趣味は料理。