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Opinion/Report

008:『ミンヨン 倍音の法則』完成披露試写会
取材・構成:矢本理子
Date: October 02, 2014
佐々木昭一郎監督 | REALTOKYO
佐々木昭一郎監督

9月17日、四谷三丁目の韓国文化院で、10月11日(土)より岩波ホールで公開を控えている映画『ミンヨン 倍音の法則』の一般試写会が開催された。本作は佐々木昭一郎監督の20年ぶりの新作で、初の劇場公開映画。『四季・ユートピアノ』や『川の流れはバイオリンの音』など、往年の佐々木昭一郎作品のファンを中心に、会場には300人が集まった。作品上映前に行われた、佐々木昭一郎監督の舞台挨拶をレポートする。

「音楽の豊かな作品です。市船のシンフォニーによる演奏と、ジュピターと、モーツァルトのピアノ演奏による三重構造でできていて、最後に一直線で終わります」と語った佐々木監督。そして、「この映画は、ボランティアの出演者によって成り立っています」と出演者や協力者に向けて感謝の意を述べ、完成を祝って来場した、映画出演当時小学5年生だった高原勇大さん(現在は中学2年生)をはじめ、市立船橋高等学校吹奏楽部と船橋フィルハーモニーの方々を1人ずつ紹介し、会場は温かい拍手で包まれた。

 

出演者の高原勇大さん | REALTOKYO
出演者の高原勇大さん
元市立船橋高等学校吹奏楽部のみなさん | REALTOKYO
元市立船橋高等学校吹奏楽部のみなさん

20年ぶりの新作にして初の劇場公開映画を手掛けたことについて監督は、「みなさん嫌な顔をせず、一生懸命に演じてくれました。見事でした」と語る。そして、「映画監督は実は初めてです。98%はすぐに撮れましたが、残りの2%が撮れず、みんなに迷惑をかけました。映画監督の仕事は、人に迷惑をかけることです」と、映画を監督することの厳しさを佐々木流のユーモアで語り、会場に駆けつけた佐々木作品の往年の制作スタッフも1人ずつ紹介した。

 

制作スタッフ一同。左から岩崎進さん(音響)、松本哲夫さん(編集)、佐々木昭一郎監督、吉田秀夫さん(撮影) | REALTOKYO
制作スタッフ一同。左から岩崎進さん(音響)、松本哲夫さん(編集)、佐々木昭一郎監督、吉田秀夫さん(撮影)

最後に、会場に集まった全員に向けて、「歌でいっぱいの映画です。みなさん、観ながら歌って下さっても構いません。どうぞ楽しんで下さい」と語り、舞台挨拶を締めくくった。

 

プロフィール

ささき・しょういちろう/立教大学経済学部卒業後、1960年にNHKに入局し、芸能局ラジオ文芸部でラジオドラマの演出を手掛ける。処女作は『都会の二つの顔』(63年、ラジオテレビ記者会年間最優秀作品賞、芸術祭奨励賞)。68年、テレビドラマ部に異動し、『四季・ユートピアノ』(80)、『川の流れはバイオリンの音』(81)など。類いまれな詩的感性、斬新でみずみずしい映像で作られたドラマは、イタリア賞や芸術祭大賞など国内外の数多くの賞に輝き、多くの人を魅了し、後進の作家に強い影響を与えてきた。95年にNHKを退局。その後はフリーディレクターとして活動。文教大学情報学部教授としても10年にわたり教鞭をとった。『ミンヨン 倍音の法則』は20 年近い沈黙を破る待望の新作であり、初の劇映画作品である。

(c)2014 SIGLO/SASAKIFILMS | REALTOKYO
(c)2014 SIGLO/SASAKIFILMS

インフォメーション

ミンヨン 倍音の法則

モーツァルトを愛するソウルの大学生ミンヨン。祖母が日本人の友人一家を撮影した戦時中の写真に心ひかれ、日本を旅する。そこで巡り合う人たち、いつしか彼女は時を超え、その友人の苦難の人生を生きる――。自由な感性で、現代の不安、音楽の歓びやハーモニーへの夢を描く。

 

10月11日(土)より岩波ホールほか全国順次公開

監督・脚本:佐々木昭一郎

配給:シグロ

公式サイト:http://www.sasaki-shoichiro.com/

(c)2014 SIGLO/SASAKIFILMS | REALTOKYO
(c)2014 SIGLO/SASAKIFILMS

寄稿家プロフィール

やもと・たかこ/東京生まれ、茨城県育ち。大学では社会学と歴史学を、大学院では西洋美術史を学ぶ。1995年に岩波ホールへ入社。現在は宣伝を担当している。2012年4月より『こども映画プラス』の「こども映画図書館」のコラムを担当中。時おり『TRASH-UP!!』に、音楽記事も執筆している。