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Interview

107:近藤良平さん(コンドルズ主宰・振付家・ダンサー)
聞き手:松丸亜希子
Date: May 14, 2014
近藤良平さん(コンドルズ主宰・振付家・ダンサー) | REALTOKYO

開館20周年を迎えた彩の国さいたま芸術劇場に、学ランがトレードマークのダンスカンパニー、コンドルズが登場。2006年から新作を上演し、8度目となる。ダンスだけでなく、コント、映像、影絵、ライブ演奏など、様々な要素で構成されるステージは、カッコよくて可笑しくて、観れば元気が湧いてくる。今回の公演タイトルは『ひまわり』。ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの名作へのオマージュ? それとも……。主宰の近藤良平さんにお会いした。

コンドルズ結成が1996年ということは、もう18年になるんですね。

 

わー、そんなになりますか? ちゃんと数えてないから、わからないけど、もうすぐ20周年ですか。早いですね。

 

20代後半だった近藤さんほか、主要メンバーがいまや40代になられて。

 

そんなに先のことを考えずに始めたんですよ。コンドルズの最初の公演は横浜のテアトルフォンテで、舞台の進行も下手だったけど、それよりも楽屋の使い方がヒドくて、ものすごい叱られました(笑)。その時々でいろんなことがあったけど、90年代の記憶はだんだんなくなってきたかもしれません。面白いことに、立ち上げ当初のメンバーがいまもいるし、あんまり変わらないんですよ。でも、継続しているのはすごいことだと周りに言ってもらえるようになって、確かに僕もその通りだなと思います。

 

コンドルズ (C)HARU | REALTOKYO
(C)HARU

学ランメーカーさん、ぜひ衣装協力を!

コンドルズといえば学ランですが、ストレッチ素材の特注品じゃないですよね? よくあんなに動けるなぁと思って。

 

ははは、ストレッチ素材じゃないです(笑)。オクダさんのだけは特別ですけど。当初オクダさんだけサイズがなくて、既製品のいちばん大きいのでも入らなかったから、生地を足したんですよ。特注品はむちゃくちゃ高かったから。そしたら、ボタンがちょっとズレて、センターにないという(笑)。いまはたぶん特注品を買ってるんじゃないかな。学ランはぞれぞれ適当に用意して、家族や親戚にもらったりしてます。だから、よく見ると形もスタイルもみんなバラバラ。僕のコレクションには紫系のとか、しぼりがスゴいのとか、不良っぽいのもあって。なぜかボンタンみたいなのを履いてたメンバーもいて、「ボンタン似合うよ!」って言ってましたね(笑)。

 

みなさん何着か持ってるんですか?

 

いや、だいたいみんな1着じゃないかな。願わくば、どこかの制服メーカーさんが「コンドルズさんへ」って、学ランを用意してくれたりしないかしらと期待してるんだけど。そういう話は一回もないですね(笑)。僕は3着くらい持ってるけど、だいたい使うのはいつも同じ。それは二代目の学ランなんだけど。1着しかないと地方公演のときはキツいですよ。途中でコインランドリーに突っ込んだり、楽屋にファブリーズを4本くらい常備して海外公演にも持って行きます。しまいには体に直接吹きかけたりして(笑)。

 

恒例の埼玉公演。広いステージのために、まずは腹筋から

メンバーのみなさんは、ダンスだけでなく、映画やテレビ、演劇、音楽などジャンルを超えて活躍されていますよね。稽古のスケジュール調整がたいへんでしょう?

 

さっきスケジュールを出したばかりだけど、みんな来れるのかな……(笑)。彩の国さいたま芸術劇場に稽古場があるというだけで、僕は「もったいない症候群」になっちゃって。スペースを借りるのはちょっと命がけ。やった、ラッキー! と思って借りたら、ダンスしちゃいけない場所だったり、そんなのばっかりでしたから。埼玉では劇場内に稽古場があるというのに、遠いから週末しか来れないメンバーもいて。だから、稽古は何時から何時まで拘束なんてことはなくて、まぁ、それはそれでいいんですけどね。

 

そんなゆるゆるな感じで公演が作れちゃうんですか。

 

いや、作れてないんじゃないですか(笑)。ははは。

 

そのゆるさも魅力ですね。コンドルズは「コントもできるダンスカンパニー」なのか「踊れるコント集団」なのか。けっこうコントが可笑しいですよね。

 

言葉を使う要素や笑いのある要素が直結して、僕の中でもいろいろ起きてるんです。元々僕も滑稽な要素が好きで、言葉を使った笑いに向かう方向性というのはわかりやすいから。誰でもそこに目を引かれちゃう。みんなコントが好きなんだなぁって思いますが、それはしょうがないというか。その代わり、まったくしゃべらない無音のシーンを30分作るとか、前より少し気にするようになりましたね。コントのシーンはコスプレもあって、それが現代の風潮に寄り過ぎてるなぁと思ったこともありました。でも、体の動きや使い方がコミカルだったりすることもあるし、単純にいろんな体型のメンバーが踊ること自体が滑稽でもあるし。僕たち自身が面白がっていて、それがお客さんに伝わるということもありますよね。

 

コンドルズ (C)HARU | REALTOKYO
(C)HARU

バカバカしいコントの後にキレのあるダンスを見せてくれて、そのギャップに「おお!」と思うこともあります。

 

完全にだまされてますね(笑)。メンバーたちの個性と魅力を引き出せるような演出を、よりダンス側で見せられたらと思って。その駆け引きみたいなものが面白いんですよね。みんなそのときによって違うので。「ギャー!」と叫びたいときに、叫んだほうがいいのか、ごまかしたほうがいいのか。そんなものもその人の面白さになっていくから。メンバーが本当に個性的で、それぞれのファンがいるし、年数を重ねたせいもあって、公演にはお客さんがお客さんを呼んできてくれるようになりました。

 

個性的なメンバー同士、制作の途上で意見がぶつかることは?

 

もめることもあるけど、だいたい飲んで忘れちゃいますね(笑)。稽古の後によく飲んでて、いまだに朝まで飲むことも。公演の後も飲んでるし、飲めないメンバーがいないんですよ。でも、前より体調管理をするようになりましたね。埼玉は特に舞台が大きいから走らないといけなくて。何度もやってるとはいえ、「次は埼玉だ……」と覚悟がいるんですよね。春になると我々みんな、「さぁ、始めなくちゃ!」という気になって、まずは腹筋を開始します(笑)。

 

「ひまわり」からふくらむイメージ

コンドルズ 埼玉公演2014 新作『ひまわり』 | REALTOKYO

今回の埼玉公演ですが、タイトルの『ひまわり』はどんなイメージですか。

 

去年の暮れごろから、タイトルはどうしますかと劇場から聞かれていて。だいたいいつも埼玉では、映画のタイトルがらみのものを使ってきたんです。『アポロ』とか『十二年の怒れる男』とか『白と黒のナイフ』とか。僕はヨーロッパ映画が好きで、今回の『ひまわり』はシンプルに好きな映画っていうこともあるんだけど、たまたまタイトルを決めるタイミングでアムステルダムに行ったら、観光客がみんな黄色いゴッホの『ひまわり』のバッグを持っていて。ひまわりって、きっとみんなそれぞれのイメージがありますよね。なにかしら映画へのオマージュを入れることを考え中です。このあいだもどこかで「喫茶ひまわり」っていう店を見つけたりして、なぜか目に飛び込んでくるんですよ。テレビのニュースでも台湾のひまわり学連のことを報道してたり、サンフラワーのでっかい船を思い出したり。フラワームーブメントのヒッピーだとか、いろんなイメージがふくらみます。

今年はさいたま芸術劇場でピナ・バウシュのヴッパタール舞踊団があって、コンドルズの後にフィリップ・ドゥクフレがあって。ダンスファンはもちろん、舞台好きな人ならみんなうらやましがりますよ。僕も自分がうらやましい(笑)。うらやましくてうれしい反面、僕らはこんなスタンスだから簡単に「がんばります!」なんて言わないんだけど、がんばらざるを得ないし、お客さんに失礼があっちゃいけないって思います。失礼って、なんだかわからないけですけど(笑)。埼玉公演では床面を意識することと名曲を使うこと、その2つの大きな柱もあって。埼玉の大きなステージだからこそ見せられることはなにかなと、いま考えているところです。

 

近藤良平さん(コンドルズ主宰・振付家・ダンサー) | REALTOKYO
オレンジのTシャツはメンバーのオクダサトシさんがデザイン!

(※このインタビューは2014年4月8日に行われました。)

 

プロフィール

こんどう・りょうへい/コンドルズ主宰・振付家・ダンサー。ペルー、チリ、アルゼンチン育ち。第四回朝日舞台芸術賞寺山修司賞受賞。NHK教育『からだであそぼ』内「こんどうさんちのたいそう」、NHK総合『サラリーマンNEO』内「テレビサラリーマン体操」などで振付出演。野田秀樹演出、NODA・MAPの四人芝居『THE BEE』で鮮烈役者デビュー。NHK連続TV小説『てっぱん』オープニング、三池崇史監督映画『ヤッターマン』などの振付も担当。横浜国立大学、立教大学などで非常勤講師を務める。昨秋、味の素スタジアムで開催された東京スポーツ国体2013開会式式典演技総演出担当。愛犬家。

インフォメーション

彩の国さいたま芸術劇場開館20周年記念

コンドルズ 埼玉公演2014 新作『ひまわり』

5/24(土)・25(日)、彩の国さいたま芸術劇場・大ホール

 

●公式サイト
公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団 http://www.saf.or.jp/
コンドルズ http://www.condors.jp/

寄稿家プロフィール

まつまる・あきこ/1996年から2005年までP3 art and environmentに在籍した後、出版社勤務を経てフリーの編集者に。P3在職中にREALTOKYO創設に携わり、副編集長を務める。2014年夏から長岡市在住。