イケムラレイコ うつりゆくもの
70年代からスペイン、スイスと移り住み、現在はドイツのベルリンとケルンを拠点に制作するイケムラレイコ。145点の絵画や彫刻、ドローイングを展示する、日本で初の大規模な個展が開催中だ。複数の部屋からなる会場全体が、夢や無意識の世界を螺旋状に巡る一つの物語のよう。よく登場する少女のモチーフは、「少女そのものではなく、この世とあの世を行き来する幽霊のような存在」だという。少女は魂の乗り物であり、うつりゆく世界を渡り歩いていくような気持ちになった。また、植物や動物と人間が融合するような造形は、あらゆる存在間にヒエラルキーのない「つながり」を表す。さらに、山水画からの影響とメキシコへの旅を通じて、人と風景が一体化した新たなヴィジョンが生み出されている。人間もまた、変わりゆく自然の一部であると思うと、世界の見え方が少し変わってくる。


豊田市美術館
撮影:林達雄
本展は、絵画、彫刻、ドローイング約145点を、1300平方メートルの空間の中に展示する、日本では初めてとなるイケムラレイコの本格的な回顧展です。半分以上の作品がドイツのアトリエからの出品(つまり日本初公開)で、新作も展示されます。
ちょっと不思議な存在。それがイケムラの作品のキーワードです。キャンバス地から浮かびあがってくる女、キャベツの頭を持つ人、うつろをはらんだ横たわる少女、岩の中にふと見える怪物のような顔などなど。イケムラが幽霊とも思えるような存在をつくるのは、「うつりゆくもの」への関心を持っているからだと言えます。存在と無。動物と人間との間の進化論的関係。手つかずの自然と人間による文明。ともすればAからBへの一方向の移行として捉えられがちなうつりゆきを、彼女は、相補的で、往復可能で、蛇行的で、終わりのないものとみなし、それを自らの作品において表現しているのです。
彼女はまた、自らの作品がエコロジカルであってほしいと願っています。絵画は人間の身体に合わせた大きさ。彫刻の素材には土へと返りやすい粘土を選び、ドローイングでは木炭やパステルに紙といったシンプルな材料を使っているのです。そこには、この時代にアーティストとしてモノをつくることの意味について実践的に考えてきたイケムラならではの思想を見てとることができるでしょう。
そうしたイケムラの作品には、詩情の中に哲学が、静けさの中に情動的な強さが感じられます。またフラットに見えて奥行きがあります。相反する質を優しく包みこむ彼女の作品は、これからの「うつりゆき」を考えなければならない今こそ、深く感じとれるのではないでしょうか。
主催・協賛・後援等
主催:東京国立近代美術館、三重県立美術館
協力:ルフトハンザ カーゴAG
東京国立近代美術館日程終了
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エリア | その他23区内 |
住所 | 東京都千代田区北の丸公園3-1 |
アクセス | 地下鉄東西線「竹橋駅」(1b出口)より徒歩3分 |
電話番号 | 03-5777-8600 |
会場ホームページ | http://www.momat.go.jp/ |
日程 | 2011年8月23日~2011年10月23日 |
時間 | 10:00~17:00(金曜は20:00まで、入館は閉館30分前まで) |
料金 | 一般800円/大学生450円 |
休館日 | 毎週月曜日(祝日の場合は開館・翌火曜日休館) |
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