四つのいのち
南イタリアの山奥。ヤギを放牧する老いた牧夫が静かに息を引き取る。仔ヤギが産声を上げ、大きな樅の木の根元で眠りにつく。春になり、村人が樅の木を切り倒す。広場に立てられた木は、祭りの後木炭になる……。ドキュメンタリーに見えるがそうではない。人間、動物、植物、炭という4つの命をモチーフに、生命が循環し、リンクしていることを描いた映像詩。じっくりと映し出していく長回しの映像は一幅の絵画のようで、自然の音を紡いだサウンドも美しい。人間だけがエラいわけじゃない。身の丈に合った生活、目で見て合点がいく範囲の暮らしへのゆるやかな回帰を想った。


南イタリア、カラブリア州の山深い地方。老いた牧夫が山羊の世話をし、教会を訪れ、毎晩、薬代わりに教会の床の埃を水に溶いて飲み、眠りに就く…。長い間、変わることなくそんな暮らしをしていた牧夫も、やがて死んでいく。
仔山羊が誕生する。仔山羊は最初の一歩を踏み出すが、群れに遅れ、森で溝にはまってしまう。上ることができず、助けを求めて鳴くが、牧羊犬にも誰にも、その声は届かない。群れは仔山羊を残して行く、その運命のままに。ようやく溝から抜け出た仔山羊は、あてもなくさまよい、夜になり、大きなモミの木のもとで眠りにつく。
春、数百年も続く例年のピタの祭りの為に、村人がその大きなモミの木を切り倒しにやってくる。枝を切り払い、がっしりした幹を村へと運び出す。村の広場にこの木を立てるのだ。祭りが終わると、モミの木は炭焼きに売られて行く。
小さく刻まれ、組み上げられたモミの木の小山。それ自体が炉の役割を担う、その小山は藁と粘土に覆われて、点火され、煙を吐き出す。世代から世代へと古くから伝えられる技術によって、生きている植物である木は、不活性の鉱物=人々の暮らしを支える木炭に生まれ変わる。
こうして人間、動物、植物、炭、4 つの命がサークルを描き続ける。
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シアター・イメージフォーラム日程終了
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エリア | 渋谷 |
住所 | 東京都渋谷区渋谷2-10-2 |
アクセス | 「渋谷駅」東口から宮益坂を上り、青山通りへ。50m程先の横断歩道を渡り、薬局とコーヒー店の間を入りすぐ。 |
電話番号 | 03-5766-0114 |
会場ホームページ | http://www.imageforum.co.jp/theatre/ |
日程 | 2011年4月30日~2011年6月17日 |
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