冬の小鳥
舞台は1975年の韓国ソウル郊外。よそ行きの服を着せられ、美味しそうなケーキを胸に抱えて、大好きな父に連れられて訪れた先は、カトリックの児童養護施設だった。ある日突然予想もしなかった状況に投げ込まれた9歳の少女の感情の動きが、繊細に描かれている。絶望に苦しむ少女の心の「死」と、前へ踏みだす決心をする「再生」への儀式──激しくも美しい一瞬一瞬の少女の表情とまなざしが観る者の眼に焼き付けられ、スクリーンを離れてからもふと脳裏によみがえる。監督自身の9歳の時の実体験を元にしているそうだが、描かれているのは自伝的な物語ではなく、「9歳だったときの心」である。


1970年代の韓国を舞台に、俊英ウニー・ルコント監督がつづる珠玉の作品。
1975年、韓国ソウル郊外。よそ行きの服を着せられて、9歳のジニが旅行のつもりで父に連れられてきたところは、児童養護施設だった。 父は必ず迎えにくると強く信じるジニは、頑なに周囲と馴染もうとせず、反撥や抵抗をくり返す。 「冬の小鳥」は、突然予想もしなかった状況に投げ込まれた少女の、孤独な魂の旅を描いている。 大好きな父に捨てられた少女は、たった一人で絶望、怒り、孤独と向き合い、やがて運命を受け入れ、新たな人生を歩む決意をする。 「大人は判ってくれない」(59)や「ポネット」(98)など、子供が忘れがたい印象を残した名作は多い。 本作では少女ジニの存在感が光る。「もう一度会いたい」と、彼女が祈るように父の帰りを待ち続けるひたむきな姿。 そして痛みや苦しみもいつの日か薄らぐものであることを、この9歳の少女は教えてくれる。
実際に韓国から養子としてフランスに渡った、ウニー・ルコント監督の実体験から、「冬の小鳥」は生まれた。 バタークリームのケーキ、おかっぱ頭にアップリケのついたセーター、1975年の生活描写は、日本の昭和の風景にも似て懐かしい。 「ほとんどの部分は創作だが、9歳だった時の心のままに書いた」と監督が語るとおり、ジニを通してスクリーンに焼き付ける感情は、 嘘偽りのないものだ。だからこそ映画は強力な説得力をもつことができた。
躍進著しい韓国映画と、伝統あるフランス映画が結ばれて誕生した新たな才能。
脚本を読んだイ・チャンドン監督(「オアシス」(02)、「シークレット・サンシャイン」(08))は、 “シンプルだが沢山の要素がつまっている”と評し、本作のプロデュースを買って出る。そして、2006年にフランスと韓国で結ばれた<映画共同製作協定>の 第1号作品として完成。フランスへ渡り、韓国語をすべて失っていたルコント監督だが、映画を共通言語とし、韓国とフランスのチームワークを得て、原語も 国籍も超えた、映画本来が持つ力があふれる作品を生み出した。
「冬の小鳥」は、映画誌『カイエ・デュ・シネマ』で、ポン・ジュノ監督(「母なる証明」(09))が2000年代最高の映画の1本に選出。 2009年カンヌ国際映画祭に特別招待され、2009年東京国際映画祭では〈アジアの風部門〉最優秀アジア映画賞を、2010年ソウル国際女性映画祭の場で、各国の女性映画祭から第1回アジア女性映画祭ネットワーク賞に選出された。
2009年/韓国・フランス
35ミリ/カラー/1時間32分/ドルビーSRD
原題:旅人 / 英題:A Brand New Life
2009年東京国際映画祭<アジアの風部門>最優秀アジア映画賞
2010年第1回アジア女性映画祭ネットワーク賞
文部科学省特別選定(少年、青年、成人、家庭向き) / 年少者映画審議会推薦
PG-12
配給:クレストインターナショナル
関連リンク
岩波ホール日程終了
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エリア | 神田・御茶の水・秋葉原 |
住所 | 東京都千代田区神田神保町2-1 岩波ビル10F |
アクセス | 地下鉄「神保町駅」A6出口 |
電話番号 | 03-3262-5252 |
会場ホームページ | http://www.iwanami-hall.com/ |
日程 | 2010年10月9日~2010年12月3日 |
時間 | 月~金 : 11:30 / 14:30 / 18:50 土・日・祝 : 11:30 / 14:30 / 17:30 |
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