宮永愛子展:はるかの眠る舟

1974年京都市に生まれた宮永愛子は、これまでに大山崎山荘美術館での日比野克彦との二人展(2004)やすみだリバーサイドホール・ギャラリーでの個展(2007)、昨夏の釜山ビエンナーレ(2008)など、国内外の展覧会において高い評価を受けてきました。今年1月の資生堂ギャラリー「第3回シセイドウアートエッグ 宮永愛子展」に続き、現在開催中の国立新美術館「アーティスト・ファイル2009」でも色をテーマにしたインスタレーションを発表している、今まさに注目を浴びる期待の作家です。
宮永の作品は展示期間中に少しずつ変化することで知られます。例えば常温で昇華するナフタリンを使った日用品のオブジェは、宮永の代表的なイメージのひとつです。アクリルケースの中で、宮永が与えたかりそめの姿はゆっくりとその形を失っていきます。時計の時針にも似たそのゆるやかな、誰も実際に見ていない変化を、私たちは気配としてのみ認識するのです。かたちを解かれ、姿を失いゆくかに見えるナフタリンは、ケースの中で再び結晶を結びます。それらケースの中のものたちは、私たちの網膜に静止した物質として映ります。しかし同時に、私たちの目はケースの中に流れている日常とは異なった時間を見ています。このとき私たちが目にしているものは「物質」ではなく、結晶化した「現象」です。結晶化した暮らしや世界は元来アートが目指した永遠性を、失うことによって逆説的に顕在化しているのではないでしょうか。このとき、私たちがそこに見出す「永遠の痕跡」は宮永の全作品に通底するものです。
本展で宮永は「時」を複合的に提示します。仄暗い会場の中に浮かぶひとつの長持(ながもち)。その中には目覚めと眠りが潜んでいます。目覚めている「時」と眠っている「時」。眠りは目覚めを内包し、その静謐は常にゆらいでいます。私たちはそこでどのような夢を見ることになるのでしょうか。時計の時針よりもゆっくりと変わりゆく私たちもまた、失われ、かつ結晶を結びながら固有の時の流れの中に漂っています。宮永の作品の前に立つ私たちは無意識に自らと「永遠の痕跡」を重ねつつ、しばしその動きを止め小さな眠りにつくのです。
今展はミヅマアートギャラリーにおいて宮永愛子の初めての展覧会となります。是非ご高覧頂けますようお願い申し上げます。
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ミヅマアートギャラリー日程終了
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エリア | 神楽坂・飯田橋・江戸川橋 |
住所 | 新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2F |
アクセス | 市ヶ谷駅5番出口より徒歩5分、飯田橋駅B2a出口より徒歩8分 |
電話番号 | 03-3268-2500 |
会場ホームページ | http://mizuma-art.co.jp/ |
日程 | 2009年4月22日~2009年5月23日 |
時間 | 11:00-19:00 |
休館日 | 日曜・月曜・祝日 ※4/29(水)、5/3(日)〜5/6(水)は開廊 |
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