COLUMN

mori
  • 『+81』編集長
    森なほこ
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mori

『+81』編集長の東京編集長日記

第9回:“食”と“音楽”、そして“自然”
森なほこ
Date: October 29, 2008

葉月

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夏の盛りの8月11日、『+81 Vol.41 Soundscape issue』がリリースされました。“Soundscape”とは聞き慣れない言葉ですが、「音の情景」「音が作り出す景色」といった意味合いです。この号では、情景が広がるような音楽の作者と、グラフィックや映像などでその音世界の視覚化に挑むデザイナーたち、両者への取材を敢行しました。ネット配信の台頭でレコードやCDの存在が希薄化する現在だからこその、音楽にとってのヴィジュアルの役割と重要性を問う内容になっています。表紙はTrevor Jacksonによる写真作品。宇宙っぽいような、ミクロっぽいような、不思議なヴィジュアルは、彼が所有するレコードを拡大撮影したもの。気になる方はぜひ本屋さんへ。
ちなみに、次号Vol.42は11月10日にリリース予定です。内容については連載の次回でお知らせします。


菊月

Vol.41が無事に校了を迎えた後、夏休みをいただいて、約2週間の日程で北海道へ行ってきました。この旅の最大の目的は、“食”と“音楽”、そして“自然”。

 

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RISING SUN ROCK FESTIVAL
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Big Fun

まずは“音楽”の報告から。北海道上陸後、RISING SUN ROCK FESTIVALで始まり(個人的には、エゴラッピン、サカナクション、スチャダラがよかったです!)、憧れの札幌プレシャスホールへ2晩通って(毛穴が全開になったと思うほど身体の奥まで音が届いて、踊ることもできず、音に身を委ねてただ揺れました)、最後はプレシャス主催の野外パーティBig Funで良質な音楽を心ゆくまで堪能。このBig Fun、ガツガツした感じは微塵もなく、みんなが思い思いに楽しめる、平和な雰囲気に満ちた素敵なパーティ。バンドセットでのKuniyuki Takahashiのライヴは、切なくて、美しくて、芝生に寝転がりながら、その優しい音の世界観に包み込まれました。もちろん、Danny KrivitやプレシャスのレギュラーDJの方々のプレイ、Moochyのライヴも最高で。いつかまた絶対に行きたいパーティです。


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次に“食”ですが、言わずもがな、すべての素材が新鮮! さらに空気が美味しいから、食事の美味しさも倍増。RSRの屋台飯、中央通り公園でおばちゃんが焼いていたモロコシ、ジンギスカン、スープカレー、味噌ラーメン、ソフトクリーム……挙げだしたらキリがない。しかも、BabeStar石川さん(北海道出身でかなりの食通)に“美食マップ”を作成いただいたお陰で、私らのような素人にはなかなか辿り着けないはずの名店の数々へ、札幌を食べ尽くさんばかりの勢いで毎食通い、結果的に3kg増。「どうしたら1日に5回食事が取れるか」と本気で考えていたくらいですから、致し方ありません。


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モエレ沼公園

最後に“自然”について。今回は車での旅だったので、本州から北海道へと北上するにつれて、植物や空の色の変化を感じることができました。北海道は大地も空もすごく広い。だからこそ、植物ものびのび育つのでしょうね。道の脇に生える樹ですら色や大きさ、そして生命力が違う。山にも、樹にも、草にも、すべてに精霊が宿っていると理解できた気がします。支笏湖畔でキャンプをした夜は、東京ではなかなか体験することのない、本当の“真っ暗闇”に包まれ、目を閉じて心を静かにしていると、風、樹、虫、水など、いろいろな音がどんどん聴こえてくる。「自分はとてもちっぽけだけど、地球の一部なんだ」と、不思議な安心感に包まれました。これも、私にとっては貴重な体験。それから、もうひとつ紹介したい場所が、モエレ沼公園。どこをとっても絵になる景色、どこにいても心地よい空間。 “デザインされた自然”というよりは、“自然とデザインの融合”のようだと感じました。

 

こんな具合に天国のような毎日を過ごした北海道旅行。新発見はもちろん、自分にとって、自分の人生にとって、必要なものや大切なものを改めて実感した旅になりました。帰ってきてからの社会復帰はかなり大変だったけれども。

 

神無月

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最近一番のビッグイベントといえば、引っ越し。実はここ数年間、ずっと引っ越したいと思っていましたが、本腰を入れて部屋を探すということをなかなか実行に移せずにいたんです。ところが、ネットで発見したお部屋を見て瞬間的に「ぴーん!」ときた。他にも何名かの申し込みがあったそうですが、まさかの当選。何事にも“ご縁”ってものがあるんですね。あれよあれよという間に、10月頭、馴れ親しんだ渋谷近辺のお部屋から、多摩川沿いのゆったりしたお部屋へ引っ越しました。

 

次号の編集作業がどんどん忙しくなる最中、しかも7年も住んだ部屋だったので、引っ越し準備も大変。小さな部屋に蓄積されたありとあらゆるものから、この7年間の自分の経過が感じられ、恥ずかしいような、切ないような、なんとも表現しがたい感傷に浸ってみたり。最終的にカラッポになったその部屋は自分の抜け殻のようで、「脱皮するってこういう感覚なんだな」と。

 

とはいえ、そんな感傷を忘れさせるくらい最高の新居。多摩川と空の大きな景色が目の前に広がるロケーションに、お部屋も広々。そして、なんといってもテラス。あんまりにも広いもので、どう使いこなしていいのかいまだにわからず。とりあえず、朝起きたらテラスに出て“伸び”をする。あと、洗濯物が干し放題です!

 

次号の校了を迎えたら、このお部屋に合わせたライフスタイルに、そして朝方人間に変身したいと目論んでいます。

寄稿家プロフィール

もり・なほこ/1975年東京生まれ。スノーボード三昧の青春時代を過ごす。『warp』等いくつかの雑誌編集部に在籍後、サンディエゴへ短期遊学。2003年『+81』編集部に入社。05年よりフリーランスとして同誌をメインに、『DAZED & CONFUSED JAPAN』他、様々なクリエイティブプロジェクトにてディレクションを手がける。07年5月発行『+81 Vol.36』より編集長に就任。