
3月17日 大人迷子

東コレ開催の真っ只中ですが、ロンドン取材直後の怒濤のテキスト起こしでなかなか出向くことができず……。
とはいえ、N.Hoolywood のショーは見逃せないと、仕事を早々に切り上げ会場へ。お洋服はもちろん、趣向を凝らした演出と個性豊かなモデルさんの人選、今回も存分に楽しめました。お誘いいただいたアフターパーティへ向かう際、うっかり道に迷い、渋谷の街を彷徨うことに。プレス伊部さんにしつこく電話して何度も道を聞いたのに、結局辿り着けずに諦めて帰宅。後日伺った展示会で私を見つけた伊部さんのひとことは「でたぁ、迷子!」。ほんとにね。ごめんなさい。
3月21日 自己ベスト
例えば、自分が100mを何秒で走れるのかを知っていないと、何秒を目指すのか、そのためにどんな練習をしなければならないのか、具体的な“次”が見えてこない。自己タイムを知らないで「ちょっと本気出せば10秒は軽い」なんて言ってしまう人は信用ならないし、カッコ悪い。『NYLON』『DAZED』編集長の戸川さんと仕事の打合せの延長で軽く一杯、のはずがダラダラと飲んだくれ、こんな話になった。他にもいろんな話をしたけど、なんだかどれも身に沁みた。思うこと、考えること、面倒臭がっていてはいけないな。誰よりも考えれば、きっと、自分の意志に確信が持てるかもしれないし、それが自信に繋がるのかもしれない。
3月23日 スクリュー

この日記ではすでに3度目の登場、サカナクション。東京初のワンマンライヴで渋谷クアトロへ。いやぁ、ものすごい人。すべてがレベルアップした彼らのパワフルな演奏に、人混みも気にせず、頭をブンブン振って踊りまくり。
話は少し逸れますが、お客さんが揃って人差し指を振り上げてグルグル回す光景、フェスやライヴ会場でよく見かけます。私の担当美容師さんはそれを“スクリュー”と呼ぶ。右の写真がまさにそれ。
3月28日 創造と継続
UNDERCOVERの展示会へ。上映会では見逃したショーの映像も堪能することができて、大満足。ジョニオさんに表紙アートワークを提供してもらった『+81 Vol.38 ファッション・カルチャー特集』では、服を作り続けるデザイナーの方々と、制作に欠くことのできない彼らの情熱と意欲に触れることができました。それは私にとって大きな宝物。だからこそ、自分では絶対に思いつかないイメージや発想が、共感できる形となって結びついた服を見ると、明確な理由もなくただ感動してしまいます。近い将来、ジョニオさんへもまたインタビューして、じっくり話を伺いたいです。
ちなみに、Vol.36以降(Vol.39は除く)、『+81』の表3見開きに掲載していただいているUNDERCOVERの広告ビジュアルはすべて、ジョニオさんによる創りおろし。次号Vol.40でも掲載予定なので、お楽しみに。
3月29日 ゆき祭り

昼間はスノーボード、夜は火を囲み飲んで踊る、昼夜を通して雪の上ではしゃぎまくるスノーイベント『SupeRb Session』で尾瀬戸倉に。この時期なのでさすがに雪質はジャリジャリ。けど、焼きそばやビールの屋台、巨大なボール&パイプ、そしてみんな笑顔の愉快な雰囲気に、童心を取り戻して雪と戯れた。夜の部では、隣にいたアーティストQueくんに「火を絶やすんじゃないぞぉ!」と指示を出しつつ、ここでも踊る踊る。おかげで体も頭もへろへろ。今シーズン最後の雪遊びはこうして幕を閉じました。ダイゴくん、今年もお誘いありがとうね。
3月31日 いつか会いたい
パリからロンドンへと移り住み、雑誌『Intersection』を発行したグラフィックデザイナー、Yorgo Tloupas。地図とグラフを掛け合わせたグラフィック作品など、遊びが効いているのに無駄な装飾がなく、機能性と美しさを兼備する彼のデザインは、個人的にも好み。また、スノーボードをバックボーンに持つ彼自身には親近感があり(勝手に)、先日のロンドン取材でぜひ会いたかったけど、月刊誌の発行人兼編集長兼ADという肩書きを持つ超ド級に忙しい彼との対面は、残念ながら叶わなかった。そんな彼からメールインタビューの返答が届いた。率直な彼の言葉のすべてに感じるものがあり、眠気も忘れて必死に訳した。とても興味深い内容のインタビューになったので、みなさんにもぜひ読んでもらいたいです(こちらも次号Vol.40に掲載予定)。
4月3日 インヘラー


既に多くの話題を呼んでいますが、『+81 Vol.37』で紹介したStanley Donwoodが日本初個展開催のため来日。帰国前日の今日、取材のため東京画廊に行ってきました。彼の作品からは一貫してメランコリックな感情を覚えるけど、実際の作品を目にして、底知れぬ力強さを感じた。シリーズによってモチーフや制作手法が異なるStanleyの新シリーズ『Suffer』は、すべてペインティング作品。色使い含め全体的にポップな印象だけど、そのモチーフは喘息用の吸入器、インヘラー。子どものころ喘息だったという彼、「当時はインヘラーによって生かされていると感じていたし、神よりも大きな存在に思えた」とインタビューで語っていた。それを聞いて「シャーマンの多くは幼いころ喘息だった」という、知人の言葉を思い出した。その人も、その人の息子も、喘息だったという。経験のない私にその苦痛を理解する術はないけど、何も考えられなくなるほどの苦しみに小さな体で絶えた経験によって、特別な能力を身につけたとしても何ら不思議でもないなと思った。
この時のインタビューは+81のウェブマガジンで近日掲載するので、ぜひご覧ください。
4月7日 熱意伝心
次号『+81 Vol.40』の表紙アートワークを、中面でも紹介するRob Brearleyに依頼。「こういったテーマで取材をし、ロンドンではこんなことを感じたから、それが少しでも伝わるような表紙にしたい!」と、つたない英語ながら必死で伝えた私たちの要望に、インパクトのあるアートワークで応えてくれたRob。その後も、根気よく何度もアイデアを出してくれました。おかげで素敵な表紙になりそうです。
寄稿家プロフィール
もり・なほこ/1975年東京生まれ。スノーボード三昧の青春時代を過ごす。『warp』等いくつかの雑誌編集部に在籍後、サンディエゴへ短期遊学。2003年『+81』編集部に入社。05年よりフリーランスとして同誌をメインに、『DAZED & CONFUSED JAPAN』他、様々なクリエイティブプロジェクトにてディレクションを手がける。07年5月発行『+81 Vol.36』より編集長に就任。