
こんにちは。『+81』というカルチャー誌の編集長を務めている、森なほこといいます。はじめまして。
この度、ご縁があって編集長日記を綴らせていただくことになりました。誌面ではなかなか堅苦しい言葉を綴ってもいるので、ここではもう少し素の自分に近い言葉で、心動かされたこと、疑問を抱いたこと、渦巻いたこと、ときめいたこと、大きなこと小さなこと、などなどを。


10月18日(木) 自由なのりもの
NIKE Skateboardingチーム16名が脚本、出演、演出まで手がけたスケートボード映画『Nothing but the Truth』を作ったということで、試写会に行ってきました。やっぱり自由だった。スケートボードというものは、うまく言えないけど、最高に自由で刺激的で、アグレッシヴでかっこいい。そしていつだって現在進行形。来年、『+81』でもボード・カルチャーを特集しようともくろんでいます。私自身の根っこにもあるそのカルチャーを、どんな切り口でどんなふうに誌面で伝えていこうか、今からドキドキです。
さて、私ももっとプッシュの練習をしよう。もっともっと自由になるように。
10月19日(金) 嫌いな四字熟語:固定概念
人生の少しずつの歩みと共に身についてきた知識や経験。それはあらゆる場面で人を助けるけど、時に人の感覚や直感を鈍らせることもある。ゆえに自分で自分をガンジガラメに…… なんてことも、よくある。
見慣れた風景、聴き慣れた音楽、親しい人たちとの会話、その中からキラキラと輝く小さな粒を見つけだすのは、素直な感性、まっすぐな好奇心。もちろん、思いきりひねくれる時だってあるし、途方に暮れる時も。そんな時は大きく1つ深呼吸。体の中を透明で新鮮な空気で満たして、ひねくれ物質たっぷりの濁ったドロドロ空気を外へ吐き出す。その絵をきちんとイメージしながら、今日もまた1つ深呼吸。
さて、今日から次号の入稿が始まりました。2日遅れのスタート。まだまだ仕上がっていない原稿がたくさん。伝えたいことを見つければ見つけるほど、思えば思うほど、うまく文章にならないこともたくさん。
10月22日(月) アドベンチャ
発見、吸収、学習を繰り返しながら成長していくんです。
けどね、再発見は新発見を上回る発見であることもあるのではなかろうかい?
10月24日(水) 火加減
すぐに煮詰まります。頭も心もグツグツ。アクが出たら、旨味が逃げてしまう。
美味しく仕上げるコツは、焦らず騒がず、愛情を込めて、とろ火でコトコト。
とはいえ、手際の良さも肝心です。

10月31日(水) カバー
11月10日に発売される最新号『+81 Vol.38』の表紙が決定。UNDER COVERの高橋盾さんに作ってもらいました。3パターン用意していただいたので、散々迷ってしまいましたが、でも見た瞬間に決まっていた気もします。ぐっときました。やられました。中身については、また後日。
11月1日(木) 宝島にてみんなで笑う夢
編集部はチームです。1つの舟に乗ってあらゆるところを旅する仲間。舵を取る人、帆を張る人、櫂を漕ぐ人、食料を調達して料理する人、通信係も。みんなに何かの役目があって、それぞれの取り柄を持ち寄って。晴天にキラキラ輝く海面をみんなで目を細めて見つめる時もあれば、地獄のような嵐に見舞われてキリキリマイの時もある。それでも、未開の地を目指して広くて大きな海を渡っていく。 編集長になって3回目の校了。それまで一人旅ばかりしていた自分なので、舵取りはまだまだ苦手です。でも、心に描いた宝島は本物だから、みんなで一緒に辿り着きたい。自分にしかできないこと、みんなにしかできないこと、一緒じゃないと辿り着けない場所。きれいごとばかりじゃない世の中ですが、きれいな宝島を探し求めるのは勝手ですから。

11月6日(火) パーティパーティ
編集長に就任した『+81 Vol.36』から、新しい号が出る度にリリースパーティを開催しています。どんなメンツがどんな温度で『+81』を作っているのかを感じてもらおう、そして、どうせならみんなで楽しい時間をご一緒しましょう!という気持ちから始めたものです。初回は中目黒某所の穴グラ的スペースにて超アンダーグラウンドなパーティをやりました。レンタルしたミラーボール&レーザーにもくもくのスモッグ、DJ HIKARUのプレイに一番ガン踊りしていたのは、間違いなく自分。楽しかったなあ……。そして前回からはTHE NORTH FACE(以後TNF)という心強いパートナーを得て、明治通り沿いのTNF原宿店にて開催。これはTNFと+81、そしてゲスト・アーティストの3者コラボ企画「Think Global, Act Local.」のオープニングも兼ねています。パーティ自体は関係者のみの招待制ですが、それ以降、作品展覧会が全国のTNF店舗にて巡回開催されます。今回のゲスト・アーティストは姉川たくさん。糸や刺繍による陰影が不思議な立体感を作り出す彼の作品は、実際に目にしたほうがその迫力と繊細さが鮮明に伝わってきます。機会があれば、みなさんもぜひ。
11月9日 眠れない夜
『+81』のクリエイティブディレクター(前編集長)の山下と打ち合わせも兼ねて、久しぶりに飲みに行きました。編集部に入りたての頃はスタッフが彼と私の2人きりだったので、結構よく行っていましたね。大望に燃える私のメラメラを延々と聞いてもらったものです。また、さらに夜も深まって、続いて『DAZED JAPAN』『NYLON JAPAN』編集長の戸川さんと会いました。ヒヨッコだった頃からの私を知る人を前に、頭の中のグルグルをぬらりくらりと語りどおしました。 それぞれの雑誌編集論、それぞれの設計図、そこからの建築。私にとっての「やれること」「やるべきこと」「やりたいこと」。不器用ながらも繰り返しながら進んでいく小さな歩み。そこから先にある未来。
寄稿家プロフィール
もり・なほこ/1975年東京生まれ。スノーボード三昧の青春時代を過ごす。『warp』等いくつかの雑誌編集部に在籍後、サンディエゴへ短期遊学。2003年『+81』編集部に入社。05年よりフリーランスとして同誌をメインに、『DAZED & CONFUSED JAPAN』他、様々なクリエイティブプロジェクトにてディレクションを手がける。07年5月発行『+81 Vol.36』より編集長に就任。