COLUMN

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昭和40年会の東京案内

第67回:「夢みる世界」
大岩オスカール幸男
Date: May 14, 2008
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写真1:『夢みる世界』展 会場風景

最近やることが多すぎて、たぶん、やるべきことをまじめに1日のうちにしようとすれば、1日に30時間ぐらい仕事をしなければならないと思います。でも、夜の11時ぐらいになると、ラテン的にその日にできなかったことはよほどのことでない限り次の日にまわして、気楽にワインを開けて、寝るまでどうでもいいことをしています。僕は寝るのが好きで、健康のためにも大事だと思っているので、どんなに少なくても、平日は6時間は寝ています。計算してみると毎日12時間ぐらいの用事をキャンセルしていることになります。それで、よく周りの怒りを買っています。どうして打ち合わせや飲み会に来ないのかとか、どうして参加しないのかとか、偉そうにしているとか、あいつは付き合いが悪いとかよく言われます。そのとおりなのですが、幸せなことに(なんと言っても幸男ですから)あまり周りのことは気にしていないので、良いことも悪いことも、右耳から入り、左耳から出ていきます。「人の話を聞いていない」ということかな? そのような理由で、昭和40年会との付き合いも悪いと言えるでしょう。メールはよく読まず、原稿も書く気にならず、イベントにもあまり参加していません。東京にもいないし、どうしても他の用事に気と時間がとられてしまいますが、今回久しぶりにこの原稿を書くことに決めました。


東京都現代美術館で展覧会をすることになり、久しぶりに東京に滞在しています。予算的にいろいろと問題があるようですが、とてもすばらしい学芸員の方々がいて、準備に3年かかって、『夢みる世界』という展覧会を実現することができました。サンパウロ、東京、ロンドン、ニューヨークで、この20年間に制作した作品を一堂に集めることができました。自分の中では、歴史的な展覧会なので、ぜひ多くの人に見てもらいたいと思っています。展覧会に合わせて、現代企画室から作品集とドキュメンタリーDVDを出版したので、ミュージアムショップものぞいて見てください。美術館のレストランでは、この展覧会に合わせて特別メニューができるようですが、残念ながら、僕は食べそこなってしまいました。この特別メニューの他に展覧会に足を運ぶ方にお勧めなのは、美術館のすぐ横の道を渡ったところにある「釜山」という小さな韓国レストランです。以前、韓国の釜山で開催されたグループ展に参加したことがあり、その時も僕は現地には行かれませんでしたが、なんか懐かしい味です。最近自分が行かれない展覧会が多くなってきていますが、作品ががんばってくれればよいと思っています。


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写真2:彫刻家の舟越桂さん(左)と
撮影:ジャン・ピエール・テンシン (以降すべて)
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写真3:ミュージシャンのオノセイゲンさんと

4月28日に行われた『夢みる世界』展(写真1)のオープニングには、500人以上の人々が来てくれて、久しぶりに昭和40年会のアーティストメンバーとも再会しました。長年の知り合いである彫刻家の舟越桂さん(写真2)やミュージシャンのオノセイゲンさん(写真3)とも会うことができました。東京って、おもしろい街です。大都市でありながら、村のようなものです。現代アートの世界では、100人ファンがいれば、スターになれます。1000人ファンがいれば、近代・現代・日本画も含めたアート界のスターになれます。1万人のファンいれば、芸能人になった方がよいかもしれません。近い将来、100万人という数字を目指して、都知事になるのも、おもしろいかもしれません。その時には、東京都が関わっている美術館にそれなりの予算を付け、東京都の文化レベルを上げるのも、社会的によいことかもしれません。1000万人ファンがいれば、文化大臣になるのも悪くはないな。でも、人間とのつながりは数ではないので、やはり政治家になるのはやめておいて、地味に毎日作品制作を続けることにします。

 

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写真4:左から反時計回りに、昭和40年会マネージャーの長谷川仁美、大岩オスカール、松蔭浩之、パルコキノシタ、有馬純寿、小沢剛、会田誠

昭和40年会とは、あまり深く関わる時間がありませんでしたが、今回の個展の内覧会後に一緒に飲めてよかったです(写真4)! 今回の東京の滞在は、この原稿を書いて終わりにすることに決めました。映画で言えば最後のクライマックス、または10日間の東京での人生ストーリーのまとめとも言えるでしょう。僕は今、成田空港第2ターミナルの「ナリタ5番街」というショッピングモールのカフェにいます。窓の向こうには日本航空機が並んでおり、天気は曇りときどき雨です。毎回、東京に行っているのか、帰っているのかわからない生活ですが、暗くなっていく空の中、僕は、また夢みる世界へ旅立って行きます。

 

2008年5月2日

『夢みる世界』展公式ホームページ http://www.oscar-oiwa-mot.com
昭和40年会 http://www.40nen.jp/

寄稿家プロフィール

おおいわ・おすかーる・さちお/1965年、サンパウロ生まれ。1989年サンパウロ大学建築学部卒業。主なグループ展: 2002年『アート循環系』(大分市美術館)。2003年『BoaViagem』(宇都宮美術館)。『ジャパン・ライジング』(パームビーチ現代美術インスティテュート)。『旅』(東京国立近代美術館)。2004年『ジャパン・アート・ナウ』(Korea International Art Fair, Seoul)。『国際平和展』(韓国国立現代美術館)。2005年はアリゾナ州立大学美術館で展覧会開催予定。現在、ニューヨーク在住。http://www.oscaroiwastudio.com/