COLUMN

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昭和40年会の東京案内

第31回:もっと「東京」を遍在させよう
有馬純寿
Date: August 09, 2006

前にも書いたことだが、現在東京は、あらゆる場所のモノが手に入る街となっている。だが逆に「東京のもの」はどれだけ多くの場所にあるのだろうか? そこで、ネットの世界に遍在するであろう東京を探そうと、「東京 OR Tokyo」をキーワードに検索してみた。

Googleで検索したところ、約4億6200万件の情報を検出(8月7日午前9時現在。最新値を知りたい人はこちら)。世界のサーバー上にはこれだけの数の「Tokyoにまつわる何か」がある訳だ。むろんロサンゼルスの「Little Tokyo」や、パリの現代美術館「Palis de Tokyo」など厳密には東京ではない「Tokyo」も多く含まれるが、この際よしとしよう。

 

この情報数は多いのか少ないのか? きわめてアナログな方法だが、情報1件を「1tok」いう単位にして、他のリアルな数値と比較してみると……例えば東京都の総面積は2,187km2、そこで1tokを面積に換算すれば約4.7m四方=約1坪半。また、1231万人の都民ひとりあたりの情報量は、37.5tok(個)となる。この1tok、ネット上の情報が増える(=価値が上がる)と対応する土地面積は減り、ひとりあたりの指数が増える、となんだか実際の経済指数に近い感じもしてくる。しかも株価のように数値は刻々と変化している。

 

ちなみに他の大都市は? 同様に検索すると、New York=約25億8000万件とダントツ、London=約11億4000万件、Paris=約8億2900万件、Los Angeles=約7億1600万件、Berlin=約5億4900万件など。Madrid=約3億300万件と、東京はマドリッドよりは多いようだ。アジアでは「北京 OR Beijing」=約5億8100万件、「上海 OR Shanghai」=約4億3200万件と東京に近い。「 ソウルのハングル表記 OR Seoul」は約 1億4300万件と意外に少ない。国により言語や都市の表記も異なるから、この比較が乱暴なのは確かだが、欧米先進国の都市に比してどうもアジア諸都市の検索ヒット数は概ね少ないようだ(注)。

 

図1:「Google Map」で検索した自宅付近(サテライトビュー表示)。が、画像上では更地であった。アメリカの写真データは頻繁に更新されているらしいが、日本版は2年以上前の画像?

では、ネット上の東京の情報はどれだけの鮮度があるのか? 「Google Map」の日本の画像データは意外と新しいものではないともよく言われるが(図1)、このシステムはインタフェースを公開しているので、これを応用して各種情報を付加するサービスが日本でも多く登場している。そこでは情報が頻繁に更新されているようだ。地域密着型ブログ検索エンジン(?)の「maplog.jp」、おとりよせ情報の「0141map」などに加え、東京に特化したものもある。例えばこれから起業する人におすすめの「東京オフィスサーチ」(図2)などがそうだ。

 

いまや「Google Earth」を使えば、世界のサイズ感を一瞬で体感できるようになった。しかし技術や表現法はおもろしろくても、肝心の情報が少なかったり、更新されなかったりでは、その意味は半減してしまう。

ネット上で東京にまつわる情報を検索したり、ブログに書きまくったりして「1tok」の価値を上げようじゃないか。それができるのは、これを読んでいるあなたにほかならないのですから。

図3:「4D2U

おまけ1:意外と知らない東京都のあれこれはここで。

 

おまけ2:「Google Earth」もいいけど三鷹の国立天文台から137億光年先の宇宙の地平線までを俯瞰する「4D2U」もおすすめ(図3)。21世紀の「Powers of Ten」!

 

注:これにはネット上の使用言語の問題や、国ごとの情報の制限などいろいろな政治的な問題が孕んでいるのだろうが、それはまたの機会に。

昭和40年会 http://www.40nen.jp/

寄稿家プロフィール

ありま・すみひさ/1965年生まれ。エレクトロニクスやコンピュータを用いた音響表現を中心に、即興演奏からCD、サウンドインスタレーションまでジャンルを横断する活動を展開。同年生まれのアーティスト集団「昭和40年会」など美術家とのコラボも多数。国内外の展覧会への参加も多い。ジョン・ケージの『Europera 5』の日本初演など、最近は現代音楽の仕事が増えつつある。(Portrait: Matsukage Hiroyuki)