
声に出して読んでみたら「たまもの」って聞こえたあたりで「ひと粒の米は農民の賜物」みたいな、なんかありがたい感じがして最高!! 地上数10メートルの高さを走っているので、眼下からすぐ住宅街や工場の屋根が広がっていて、ディズニーランドのピーターパンのアトラクションもしくはラムちゃんの飛行シーンのような浮遊感があって楽しい。晴れていたら、多摩川の水面や遠くの山々が鮮やかなんです、が……。
どよ〜ん……今日はトウキョウに数年ぶりのドカ雪が降って、モノレールの車窓は水滴で曇り、せっかくの景色がちっとも見えませんでした。手袋でキュキュっと窓を擦り、覗いた風景は水墨画のようなワビサビ感。雪のため、いつもよりスピードを落として運行していたので、眼下の浮遊感もいつもよりゆったり。
モノレールといえば羽田にもありますが、こっちは乗るたびに酔いますね。飛行機で遠出するとき、僕はなぜかいつもドタバタしてしまい、フライトまでギリギリの時間に、荷物を引きずってモノレールに飛び込むんです。息絶え絶えで乗り込んだ車内は、荷物を載せるスペースもあって、ちと窮屈。その閉塞感と、ちょっとだけ高所の景色に押されて、気分が悪くなります。モノレールが悪いんじゃなくて、僕の慌ただしさがワザワイしてるんですけどね……あ、ぼんやり雪景色を見ていて、ちょっとそのときのことがフラッシュバックしましたが。

多摩モノレールの車内はゆったりしていて、とても快適です。買い物帰りのおばちゃんや通勤のサラリーマンなど、乗客も飛行機に乗り込む前のようなイヤーな強気はなく(いやいや、決して羽田モノレールが悪いんじゃないですが)庶民的な方々が多いです。
でも、あいにく今日は受験日のようで……
「俺、楽勝。このモノレールみたいに、確実な路線」
「俺は、この先の乗り換え駅で降りるよ」
僕の人生の半分しか生きていないだろうに。受験生の声は、えらくフケていて、なおかつトゲトゲしく……
受験といえば20年前、僕は大学試験の数日前にハシカにかかり、高熱であやうく男性機能を諦めるかという瀬戸際に立たされましたね。あの日も今日のようなドカ雪で、山肌にあった自宅まで救急車が登ってこれず、なんとか自力でふもとの病院まで行って緊急入院しましたよ。
4日連続で予定していた試験日のうち3日間を断念。最終日、医者の配慮で点滴を多めにブチこんで試験に挑んだものの、結果はさんざん。まわりの受験生からもハシカということで煙たがられ、ひどいもんでしたね……と、またもやぼんやり雪景色を見ていて、ちょっとそのときのことがフラッシュバックしましたが。
浮き世の春を、大いに楽しめ受験生。人生みんな同じ終着駅だ。
終着駅といえば、モノレールの線路って最後はどうなってるんだろう? さっそく南端の多摩センター駅で下車して覗いてみたところ、地上数10メートルの高さでいきなりブチ切れていて、そこから垂直に階段が降りていました。案外あっけない終わり方に拍子抜けしたので、再びモノレールに乗り込み、こんどは北端の上北台駅まで行ってみました。
が、結果は同じでしたね。どよ〜ん……なんか今日は、どよ〜んとしてばかりでしたよ。みんな今日のドカ雪のせいだ!! 雪だけに、行き詰まり。なんつって。
寄稿家プロフィール
とさ・まさみち/1965年兵庫県生まれ。1993年ごろから明和電機を中心に活動。2001年3月31日に明和電機を定年退職。以後の活動は、ホームページ参照。