COLUMN

40nen
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昭和40年会の東京案内

第20回:アキハバラ美人街を散策するは21世紀の墨東綺譚か?
パルコキノシタ
Date: December 29, 2005

俺は40才にもなってアニメやオモチャが好きだ。このままオタク老人になっていく負け人生をなんとか修正することは出来ないものか。そうだ、ダサイの反対はモテるだ。モテる為には美人がいっぱいいるところへ向かおう&通おう。こんな事を考えて、自分は美女の街アキバへ出向いた(ダメ笑)。歌舞伎町や池袋の風俗へ行く感覚だ。それは年老いた老人が春を求めて散策する、ある意味平成の永井荷風そして21世紀の墨東綺譚のような風情であると曲解している。特に『電車男』以降、アキバの美人出現率は上がった。メイド喫茶のブレイクで、オレの関心は購買から鑑賞へ、旧電気街で今どんな美人が暴れているのか見に行った。

 

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天衣みつとの記念撮影

アダルトビデオ女優の質はレンタルビデオが世に普及した20年前に比べて、かなり向上した。今では毎週どこかの書店やソフト屋でサイン会+握手会+撮影会が行われている、もちろんアキバでも。ヤマギワのソフト館裏を訪ねると、AV女優の撮影会だという。飛び込みで乱入してみた。女優は天衣みつちゃん。なんで人前でハメるの? と聞きたくなるくらい美貌の持ち主だ。しかもこのサイン会の参加資格が恐ろしい、新作DVDソフトを同じ物2枚以上買った人に参加整理券を配布するというのだ。これは早い話サイン会+握手会+撮影会に3980円払って参加するのと同じじゃないか。ダブったDVDはどうするか考えなかったが会田にでもくれてやろう。多分要る要らないでいうと「要る」と言いそうな気がする。2枚分7960円を払って会場に潜入した。

本人登場、気付いたのは、マネージャーやメイク、付き人等スタッフが全員女性で占められていること。エロ業界の女性進出は素晴らしく、女性スタッフは性欲丸出しのカメラ男達に反比例してさわやかなフェロモンを分泌中だ。女優本人もとてもノリノリ。俺が強張った表情をしていると彼女。「う〜ん、みっちゃんみたいにほーら笑って」と、ボクに抱きついてきた(写真)。はっきり言って彼女(AV女優)は今パルコの教え子と同世代だ。さらに気付いたのが、いわゆるモテなさそうなカメラ小僧に混じって、おじいちゃんの姿が多い事だ。この人達はちゃんと情報をチェックして、ソフトを購入してここに並んでいる事を考えると、筋金入りのエロじじいというか、リアル墨東綺譚? しかも、妙に肌がピンクでツヤツヤしている、ツヤツヤしているおじいちゃんもみんなみっちゃんに抱っこしてもらいたがってる。こんなAV女優イベントも趣味の街アキバの現象のひとつだ。

 

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小学生アイドル「さあや」のイベントにて

さらに今度はテレビを観てびっくらこいたFカップの女子小学生アイドル=さあやがイベントやるという事で、またヤマギワへ行く。そしたらまたしても「さあやイベント」参加条件が、同じソフトを2枚以上購入で、後は1枚購入ごとに2ショット写真が撮れる権利というかなり金を使う仕組みだ。連想したのはフィリピンパブのステージかなんかで、踊り子のパンツに札を折って差し込みゃ枚数によってサービスしてもらえるアレの原理か。

今度もすごいカメラ小僧(オヤジ)の数である。時代というのは不思議なもので、スピードもミニモニも老け顔になれば、ちゃんとこういうニーズに適合した新キャラがパワーアップして現れるのだな。狭いイベント会場には無意味にでかい望遠レンズのオヤジがたくさん待ち構えている。こんなオヤジのオカズになりに小学生のさあやがサービスしたり握手したりするかと思うと、むしろ入場料5万円くらい払っちゃえば良いのにと思う。

 

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教え子たちとメイドカフェヘ
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メイドが描いたイラスト
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『東京おみやげ』展でのパルコ作品

で、今度はメイド喫茶に行ってみる。電車男のロケでも話題になった@homecafeだ。ここのシステムはもっと凄かった。プリクラ撮る権利1000円、メイドと遊ぶ権利1000円、喫茶するだけなら500円で良心的だが、エスカレータの隅っこにあるデッドスペースに無理矢理仕切りをつけて作った学園祭の屋台のような手作りな内装ディスプレイにビッシリ客がひしめき合っている。なおかつ外には順番待ちの客がズラリである。ここも、オタクというよりは出会い系風俗の様相だが、メイドのレベルはかなり高い。オーディションがありそうだ。これまでのAVやアイドルと違い、マネージャーがタレントを監視してないので、メイド達は伸び伸びしている。これは上手く言えないが商売が繁盛して当然のような気がする。芸能界の、絶対に手の届かないアイドルの世界と、日常の学園生活の中にいるクラスのちょっと美人の女の子の丁度真ん中だ。お金と言う対価を払って(といってもキャバクラに比べたらタダみたいなもんだ)ちょっといい雰囲気になりにメイドカフェに行く。ブームが去れば淘汰はされるだろうが、メイドカフェ自体は今後も残るだろう。店内は夜になるとほぼリピーターで満席に。フィギュア観ながらハァハァ言っている童貞少年でも参加できる、ちょうどいい感じのソフトな風俗だ。

面白いので後日、さらに教え子の女の子を連れて行った。同世代に同世代をぶつけた感想が聞きたかったからだ。結果もう大はしゃぎの大盛り上がりで、これまた風俗なのに家族や学校見学で見に行ける懐の広さがまた面白い。女の子って女の子が大好きなんだね。

 

世の中にオタクがここまで普及した理由について考える。オタクには商品的戦略としての性欲が巧妙に仕組まれている。しかも低価格〜高級品まで選択肢は広い。その辺で売っているもので1万円も使えばなかなか楽しい。年収100万以下のニートも、年収1500万以上の実業家も、「可能な範囲」で自分の欲望を埋め合わせる空間。それがここ。

昭和40年会 http://www.40nen.jp/

寄稿家プロフィール

ぱるこ・きのした/1965年徳島県生まれ。漫画家、芸術家。教育家。股間で絵を描く表現に端を発し、全身を使った様々なパフォーマンスを国内外でゲリラ的に行い、今では世界中の大規模展覧会の常連ゲリラアーティストとなる。異なる文化圏の世代間の人々と言語を超越した懇親を行う事を作品化している。主な作品に『絵を結婚させるワークショップ』『なぐり描き』『おむすび1ユーロ』『緊急カラオケ会議』映像作品は『特撮ワークショップ』『十日町防衛隊』著書に『漂流教師』『教育と美術』がある。ミクシイネームは公園の木の下。www.digipad.com/digi/parco