COLUMN

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昭和40年会の東京案内

第7回:ディープ下町、北千住
大岩オスカール幸男
Date: April 20, 2005

私の仕事は、アーティストです。自分の作品制作(平面や立体作品)の材料として欠かせないのが、住んでいる環境から与えられるエネルギーです。今回は東京の下町、北千住を紹介したいと思います。この町との出会いは、15年ほど前のことでした。当時、湯島の建築設計事務所で働いていて、仕事場から近くて、便利なところを探していました。住み始めた時には、この町との関わりはとても薄かったのですが、少しずつ自分のアート活動が伸びていくことで、家で作品制作をする時間が長くなっていき、地元との交流が深くなっていきました。

 

数年前からニューヨークに住んでいますが、北千住の家はまだ残っていて、日本に長期滞在するときはこの家を別荘として使っています。「故郷に里帰り」する時には、必ず通う場所が数ヶ所あるので紹介したいと思います。

 

1.加賀屋

北千住駅の西口を出てすぐのところにある、この焼き鳥屋さんは、いつも混んでいます。ボスは子供4人を育てながら、バンドをやっているのが自慢だそうです。スタッフにはこのコーナーでも書いている、土佐君(元明和電気)のファンもいます。焼き鳥屋というところは、鳥を食べに来るところというより、自慢話や、うわさ話をいただくところだと思っている人には、お薦めの店です。


ダメダメ公園(クリックで画像拡大

2.ダメダメ公園

10年前は普通の公園でしたが、春に花が咲くように、いつのまにか注意看板が公園の名物になりました。正式な名前は分かりませんが、地元の子供達はこの江戸時代に作られた迷路のような、路地に囲まれた公園を「ダメダメ公園」と呼んでいます。ここでリタイヤした年寄りみたいに、日向ぼっこしながら缶コーヒーを飲むのが好きです。この界隈では、ほとんどの家族が代々同じ住所に住んでいるので、近所付き合いはかなり濃く、僕のように外から来た人は珍しいです。インターネットよりもはるかに早い「近所のおばさん通信」が充実していますので、悪さはエリア外でしておいたほうがよいと思います。


3.大黒湯

地元でもっとも人気のある銭湯。味のある昔の建築の一部を残し、設備は最新のものです。煙突、下足札のついた下駄箱、壁の富士山、露天風呂、サウナ、滝、鯉、要するに撮影にもよく使われるような、もっとも銭湯らしい銭湯です。脱衣所の天井画は、扇風機の横で首をふいている時、眺めている価値のあるものです。


ヘブロン(クリックで画像拡大

4.大門(おおもん)商店街

北千住駅前の再開発で地元商店街はかなりの打撃を受けましたが、手作りの美味しさは、まだ北千住の駅から離れたところでしっかり守られています。駅から歩いて、10分ぐらいのところに、(まだ)賑わっている大門商店街があります。お薦めはお肉屋さんの「秩父屋」。自家製のアツアツ揚げたてコロッケを夕方、歩きながら食べることです。この店の向かいにある、「ヘブロン」のキムチもかなりの評判です。

 

僕の日本の故郷と言えば、ディープ下町、北千住です。ここから多くの作品が生まれ、世界へ旅立っていきました。

 

(全撮影:高田洋三)

昭和40年会 http://www.40nen.jp/

寄稿家プロフィール

おおいわ・おすかーる・さちお/1965年、サンパウロ生まれ。1989年サンパウロ大学建築学部卒業。主なグループ展: 2002年『アート循環系』(大分市美術館)。2003年『BoaViagem』(宇都宮美術館)。『ジャパン・ライジング』(パームビーチ現代美術インスティテュート)。『旅』(東京国立近代美術館)。2004年『ジャパン・アート・ナウ』(Korea International Art Fair, Seoul)。『国際平和展』(韓国国立現代美術館)。2005年はアリゾナ州立大学美術館で展覧会開催予定。現在、ニューヨーク在住。http://www.oscaroiwastudio.com/