ソウルでの24時間イベントを終えて東京に戻ってきた。ソウルの街自体は、東京あるいはそれ以上に活気があり、店や品々も多くしかも安い。僕らがイベントを行った弘大（ホンデ）エリアはクラブや小洒落たカフェも多く渋谷さながらの若者街であったが、なぜかCDやDVD、書籍、総合雑貨などの大型店は見当たらなかった。やはり店の規模は僕がよく行く渋谷のほうが大きい。

 

渋谷には世界最大級のタワーレコードはあるし、作品作りに必要なたいていの物は東急ハンズで揃う。本ならブックファーストに行けばいい。これでだいたいの探し物は手に入る。品切れしててもAmazonでネット通販すれば２、３日で自宅に届く。

でも、渋谷での買い物は新品が中心。中古屋が少ないので偶然の出会いや掘り出し物も新譜CD以外まずない。電気関連の物も、専門的な品となると東急ハンズではまかないきれない。そこで、もっとディープな物探しに繰り出すのはいわゆる専門店街だ。なぜかこれらは千代田区に集中している。

今日の目的地は秋葉原だが、せっかくなので僕の千代田区・店めぐりコースをご紹介しよう。

 

地下鉄・神保町駅を降り、古書屋めぐりからスタートだ。専大前の交差点から靖国通りを進み、まずはサブカル、音楽、ファッション誌などのバックナンバーの宝庫、「ヴィンテージ」に。『ビックリハウス』の3周年記念号を買う。次に音楽書や楽譜の専門店の「古賀書店」に入る。長年探してた日本の現代音楽の楽譜集を見つけ狂喜乱舞、もちろん即買い。さらに進み少し先の神田古書センターに入る。ここは古本屋が集まるビルだが中古レコード店もある。まずは最上階の「富士レコード社」から攻める。オールジャンルの店だが特にクラシックやムード音楽、邦楽などの出物が多く、資料探しには欠かせない。ここで買った現代音楽のレコードは数知れず。が、今日は出物ナシ、店の人に最近の中古状況を聞く。6階の「新世界レコード社」にも久々に立ち寄る。旧ソ連の国営レーベル「メロディカ」など、ロシアや東欧、時には北朝鮮のレア物が手に入る店だったが、少し様変わりしてCDはちょっと減り、カメラやアクセサリーなどのグッズが中心となったようだ。ゲバラのバスソープなんて珍品を発見。さらに降り２階の漫画古書の「中野書店」ものぞく。

 

古書センターを出て神保町の交差点をわたり、今度は「ディスクユニオン」に。ソウルで松蔭がかけたYMOの「京城音楽（Seoul Music）」の歌詞を確認したくて『テクノデリック』を購入。坂本龍一が見た光州事件直後のソウルの風景を描く歌詞と、昨日までいたソウルの街の差に、20年という年月の長さを感じる。再びキナ臭い時代へと突入しつつある現在、この曲は一聴の価値あり。

さて、となりの「高岡書店」で遅ればせながら吾妻ひでおの『失踪日記』を買い、そのまますずらん通りへ。食事をする予定だった「キッチン南海」は休憩時間、向かいの「スヰートポーズ」も閉まってる。あきらめてそのまま進み、「東京堂書店」に入る。神保町には「書泉グランデ」、「三省堂」と大型書店は多いが、ここの本の並びにはいつも舌を巻く。本の目利きがいる書店は頼もしい。その後、建築専門の「南洋堂書店」に立ち寄る。

本屋街を抜け、駿河台の交差点を御茶ノ水方面に進むと今度は楽器屋街に行き着く。本当は一軒一軒のぞきたいところだが、今日は「イシバシ楽器」のみにとどめる。ヤマハのデジタルミキサーの中古品があったが、さすがにデカいし状態をチェックしてる時間もないので、あきらめる。今度行ったらきっとないだろうな。「オーディオユニオン」にもちょっとだけ立ち寄る。その後、御茶ノ水を右に曲がり、「キッチンカロリー」でなつかしのカロリー焼きを食べ、いよいよ秋葉原へと進む。

御茶ノ水駅の坂を一気に駆け下り、電気屋ゾーンに突入。いつもならこの付近のパーツ屋からチェックするのだが、今日はもう時間のないので、まずは目的地へ。

一軒目の目的地がここ、「オヤイデ電気」。電線ならなんでも揃う全国でも有名な店だ。で、探し物のカナレ社製の施設用マルチマイクケーブル100m巻きの在庫を聞くが、在庫ナシでメーカーから取り寄せで中３日ほどかかるとのこと。もうひとつの探し物のオーディオ用壁コンセントを購入し、すかさず他の店へ。他の電線屋でも在庫なく、「そんなもん普通は店頭在庫なんてないよ」と言われる。だがこっちが必要なのは明後日なんだけど。

駅前のラジオ会館にある音響機器専門の「トモカ電気」に行き相談したところ、なんとかメーカー直送で明後日には届けられるという。一安心。ところでこのビル、10年前はパソコンとオーディオ関連の店ばかりだったが、今は大半の店がフィギュアや同人誌の店になっている。ともにオタク系ショップには変わらないが、その栄衰を感じる。

その後、遅くまでやってるパソコン関連の店に繰り出すが、そこらへんはまたの機会に。

 

ところで、帰国直後だからかもしれないが、専門店街の雰囲気はソウルの店々を思い出させる。

小ぶりな店内に品々が雑然と並んでるという点もそうだが、それ以上にどんな店にも常連がいて会話が絶えないところが同じだ。品数も多くきれいに整っているが、買い物客はレジにならぶだけの大型店でのショッピングと、ちょっと敷居が高そうな店構えだが、時には店員とあれこれ会話しながらの物探し。どちらが「いい買い物」なんだろうか。