4weeks

Tokyo 4 Weeks

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086:EXPERIMENTAL SOUND, ART & PERFORMANCE FESTIVAL
推薦:アンドレアス・シュトゥールマン
Date: February 03, 2010
Tokyo, 4 Weeks / REALTOKYO
サウンドアーティストmamoru「etude no.13─氷─」 (2/21)
Tokyo, 4 Weeks / REALTOKYO
中川敏光「描画 3構成─鉛筆の電気特性」 (2/27)
Tokyo, 4 Weeks / REALTOKYO
azumaru×takuya「逢魔時」 (2/21)
Tokyo, 4 Weeks / REALTOKYO
トマツタカヒロ「WHITE CUBE GYMNASIUM」 (2/28)

このタイトルからもう想像できるはずだが、とてもREALTOKYOらしく、musicなのかstageなのか、それともartなのか、どのジャンルで取り上げればいいかよくわからないようなイベント。データ入力のときに1つのジャンルに決めないといけないから、こういった雑多なものはいつも困ってしまうが、今回(主催者が)あえてmusicにしたのには理由がある。「Sound」の項目のほかに、「Art」と「Performance」も、プログラムにある全ての公演・展示・ワークショップなどが「音」に焦点を合わせているからだ。

 

選考委員を務めた一柳慧(作曲家)、山下洋輔(ジャズピアニスト)、畠中実(ICC学芸員)、中川賢一(ピアニスト、指揮)、家村佳代子(トーキョーワンダーサイト事業課長)の5人が、音の聴かせ方、あるいは見せ方がユニークな表現者を何組か選んだ。ピアノの生演奏もあれば、音が中心となるインスタレーションなど、いわゆるサウンドアートもあり、なぜか音が出るダンスパフォーマンスもある。コンピューターを使ってデータをリアルタイムでいじる「演奏」(平本正宏/Computer Quartet)や、空間の変化によって音を変化させるアート(+LUS)、無声映画とピアノ即興演奏という組み合わせ(神崎えり)といった発想はもちろん決して新しくないが、聞いたことも見たこともないような方法で「音」に取り組む試みと併せて、全体的にはバランス良く「サウンド」のさまざまなあり方を探求するフェスティバルになりそう。

 

サウンドアーティストのmamoruはさまざまな日常品を使いながら、それらから出る音を聞かせるが、ストローやサランラップ、氷などマイクロな世界の音は意外と迫力がある。今回は溶ける氷の作品を紹介するので、宮永愛子的な「だんだん消えていくアート」の側面もある。azumaru×takuyaが舞踏とエレクトリックギターを結びつける一方で、中川敏光がパフォーマンスで奏でるのは鉛筆だ。鉛筆の芯の電気特性に着目し、そういう意味で鉛筆で「回路」を描くことによって、作家本人が「DIY電子楽器」と呼ぶものをつくる。このフェスティバルで披露するという演奏も楽しみだ。そしてもうひとり見てみたいアーティストはトマツタカヒロ。彼のジムではなんと、格闘練習ツールが楽器として登場する!

 

このほかにもたくさん見応えのありそうなパフォーマンスがあるが、出演者たちをネットで調べてもあまりヒットしない(ヒットのほとんどが本イベントの情報)。つまり大御所はいなくて、「これから」という音楽(あるいはアート? あるいは舞台芸術?)の若手作家ばかりなので、失望もあるかもしれないが発見もいろいろありそう。来年またやるとしたら、選考委員に今回の畠中実のような音楽家でない人間、そしてベテランのピアニストたちよりもう少し今のサウンド/アート/パフォーマンスシーンと接触のある人を何人か入れれば、さらに面白いイベントが実現できるのではないかと思う。ともあれ今回は楽しみだ。

寄稿家プロフィール

Andreas Christian Stuhlmann/REALTOKYO英語版編集長。国籍はドイツ。89-97年までケルン大学で日本学と哲学を専攻し、特に舞踏などの現代芸術を研究。何度かの来日を経て、98年に東京に移住。元・英文雑誌『東京ジャーナル』の編集者で、音楽、ダンス/パフォーマンス、ファッションなど守備範囲は広い。かつて東京のクリエイタ−をインタビュー中心に紹介し、高い評価を得た企画『PLANT』の製作にも関わった。