REALTOKYOピックアップ:本・CD・DVD
2007年7月〜9月発売/掲載分
机のなかみ【DVD】
可愛い女子高生の家庭教師をもてない大学生(演ずるは大ブレイク目前、筆者も注目しているピン芸人あべこうじ)が請け負う。でも想像通りのどきどきストーリーは前半まで。映画の途中で時間軸が最初の時点まで戻され、今度は女子高生の視点から彼女の毎日を描写していく。そこから浮かび上がるのはとても切ない物語だった。女子高生役の鈴木美生、彼女の親友、あべこうじと同棲している女…役者たちのナチュラルでリアルな演技にも驚嘆させられる。惜しくもレイトショー公開だっただけに、多くの人に見ていただきたい1本。

¥3,990 2007/9/28 発売 AAMAD-113
Modeselektor: Happy Birthday【DISK】
エレクトロニカ界で最も風変わりな男2人の新作は、ほぼ同時期に生まれる予定の2人の子供たちに捧げられる。めでたい機会で意欲が過剰なせいか、70分の長さだのトム・ヨークやO. v. Schirachら豪華なゲストだの、なんだか力を入れ過ぎたような印象を、聴く前から受けてしまう。しかし、やや退屈な1曲目を聴くだけでは予想できないが、結局はたっぷり楽しめる、変化とユーモアと音楽性に富んだ内容だ。さすがに最後まで聴くと少し疲れるが、「強いアルバムを聴いた」感が残る。生まれていきなりこんなのを聴かせられる子供って、いったいどうなる���だろう…。

オープン価格 2007/9/10 発売 ABPC 159
バレンボイムの素顔【DVD】
この9〜10月に、音楽総監督を務めるベルリン・シュターツカペレとともに来日する世界的指揮者でピアニストのダニエル・バレンボイムは、ロシア系ユダヤ人としてアルゼンチンに生まれ、イスラエルで育ち、ヨーロッパで活躍している。特筆すべきワーグナー・オペラのスペシャリストであり、イタリア・オペラも演奏すれば、ドビュッシーも演奏する。バッハはもちろん、現代音楽、タンゴ、ジャズ、ボサノバ……。特定の時代、特定の地域の音楽が持つ「相似と相反」を、「いま・ここ」で探求し、ひとりの人格が持ちうるポリリズムの可能性を広げることで対話を生み出していく。DVDにも登場するが、パレスチナ人サイードとの対話の書『音楽と社会』とともにご覧いただくとさらに深い。

¥3,990 2007/8/24 発売 AAHBC-10009
Ditch: Ditch Weed【DISK】
半野喜弘と田中フミヤ、ファンキーなミニマルテクノの大先生2人が主宰するop.discからの新譜は、若手アーティスト、コウノ・シンイチロウの1stアルバム。音楽の経歴がとても短いが、わずか3年ほどの活動で技能とセンスを見事に磨き上げたことが本作からよく伝わる。ミニマルの核を取り巻くさまざまなジャズ〜アンビエント〜ポップス〜ワールドミュージックの面白い欠片が特徴のこの人の音楽を聴くと、音の削り方などの「経験」は全く関係ないように思えてくる。全体的にもう少し変化があれば真の傑作になったはずだが、これでも充分に楽しめる内容だ。

¥2,400 2007/8/25 発売 Bop.disc 015
沼野恭子:夢のありか──「未来の後」のロシア文学【BOOK】
情報化社会が進んだからと言って、同時代の世界の文学動向をリアルタイムにして正確な文脈で知ることは難しい。冷静な分析力と情熱的な眼差しで現代ロシア文学を紹介する本書は、その意味でも好著だ。人口に膾炙した重厚なロシア文学、アバンギャルドによる実験的な文学、さらにソ連時代の文化統制期に「机の中」とも呼ばれた秘密出版による地下水脈が、冷戦崩壊後の新しい文学の登場へと繋がるという事情は深い。沼野の筆致から、近年のロシア文学に顕著な「混沌の多様性」と言うべき力強さは、21世紀の新たな世界情勢に向き合う力だということを強く感じる。

¥2,100 2007/7/30 発売 ISBN: 978-4861821400
川崎昌平:知識無用の芸術鑑賞【BOOK】
ゲリラ的に撮影した映像に詩的な言葉を重ねた作品などで知られるアーティストが、アートの入門書に挑戦! オールドマスターからコンテンポラリーまで、作品や作家に関する知識を前提としない自由な鑑賞態度の見本を綴る。例えばロダンの『考える人』を「わざわざ裸で考えるあたり、余人には想像もつかぬ壮大な計画でも練っているのかも」と分析するなど、川崎節が炸裂。作品を読み深める想像力と、その前提となる観察力の豊かさに学びたい。あえて図版をいっさい掲載していない実験的書籍。

¥756 22007/7/26 発売 ISBN: 978-4344980426
アート情報誌『ART iT』第16号【BOOK】
今号の特集は「21世紀の映像表現100」。世界を舞台に活躍するアジア=パシフィックの映像アート作家3人のインタビューを筆頭に、アート/映画/ミュージックビデオ/CMまで各界の見巧者がジャンルを超えて選ぶ「芸術的映像」10人×10本、さらに映像アートの購入法までを紹介。「『9.11』が変えた映像表現」「YouTube時代の映像表現」など社会と映像の関係にも迫る。連載陣では、しりあがり寿が「批評精神」について考え、津村耕佑は書家の華雪さんを迎えて衣装を制作。完全日英バイリンガル。
株式会社アートイット / 紀伊國屋書店
¥1,500 2007/7/17 発売 ASIN: B000SSQ4UY
川内倫子写真集:種を蒔く Semear【BOOK】
2008年、日系移民がブラジルに移住してから100年になる。これに先立ち、サンパウロ近代美術館で、外国人の眼で見たブラジルというテーマで展覧会が企画され、写真家の川内倫子が個展を行った。そのときの撮影をまとめた写真集。ラジオ体操をする人々、貧民街の夜景、カーニバルの色、鳥の色、イグアスの滝……。ノイズをも包み込む透明感のある色、異なる場所や出来事を感覚的に組み合わせる川内の持ち味が発揮されている。ややソフト過ぎるきらいもあるが、貧しくとも明るい人々に敬意を表し、生活者が紡いだ100年を祝福したかったのではないか。

川内倫子(写真/構成)フォイル
¥2,940 2007/7/11 発売 ISBN: 978-4902943207
Kiiiiiii:AL&BUM【DISK】
舞台と衣裳をいつもかわいらしく���出。でもドラムとボーカルだけのライブは異常にテンションが高くてちょっと変(?)。そんなギャップが楽しい女の子2人組バンドのCDがついにリリースされる! 音楽、アート、ファッションと広くファンを集める彼女たちの、型にはまらない魅力を最も感じることができるのはライブだけど、綺麗にミックスされたCDもやっぱりいいのです。特にボーカル中心で切ないメロディを生かした楽曲、打ち込み中心のアレンジで遊び心も満載の楽曲は聞きごたえあり。写真やイラスト満載の20Pブックレットつき。

¥2,625 2007/7/7 発売 ABSPT-1