REALTOKYOピックアップ:本・CD・DVD
2016年7月〜発売/掲載分
99分, 世界美味めぐり【DVD】
美食を味わうためだけに世界中を飛び回る5人のブロガーたち。予約困難な異国の有名料理店に自分で予約を入れ、年間のスケジュールを立てる。スポンサーなし、もちろん招待もお断りして、自分の五感を頼りに言葉に綴る。多くのファンを持つ彼らは、絶大な”インフルエンサー”だ。時には辛口になり、時にはキッチン脇のテーブルで超一流のシェフにサーブされる僥倖も味わう。にしても彼らは一体何者…? それは映画で観ていただくとして、スウェーデンの3人の共同監督(ジャクソン、ランデリウス、ストッカレ)が5人を追って魅せるごちそう映像が凄まじく、思わずパスポートを持って空港へ…。とはいかなくても、美味を旅する人生もありかも?

¥4,104 2016年8月26日発売 DABA-5035 | ASIN: B01GRYB1EQ
あの頃エッフェル塔の下で【DVD】
アルノー·デプレシャン監督の新作は、盟友マチュー·アマルリック、さらに今回は2人の新人俳優を主役に起用して、10代の恋愛を甘く切なく描く。人類学者のポール(アマルリック)がパスポートトラブルに合ったことから過去の3つの時代(子ども時代、ソビエト連邦、エステル)の自分を思い起こす。若きポールをカンタン·ドルメール、その恋人エステルをルー·ロワ=ルコリネ。ふたりのパリとルーベ(デプレシャンの出身地)間の純粋な遠距離恋愛にキュンとする。遠恋には手紙が必須の時代、手紙など書かないタイプのエステルが書く手紙がとても素敵だ。監督が「結局、すべてエステルだった」と語る映画、ミステリアスな謎もいっぱい。

¥4,104 2016年8月3日発売 PCBE-55334 | ASIN: B01FTX5TS0
最愛の子【DVD】
2009年に起きた中国児童誘拐事件に基づくピーター・チャン監督のヒューマンドラマ。前半は離婚した両親のジュアン(ハオ・レイ)とティエン(ホアン・ボー)の壮絶な息子探しを追い、後半、その息子を育てた女性ホンチン(ヴィッキー・チャオ)の側から描く。幾重にも重なる運命の皮肉に呆然となる。香港のドラマ作りの名監督が、親子の情をドラマチックに描きながら、成長著しい中国が抱える、一人っ子政策、地域格差など社会問題を浮き彫りにしていく手腕は見事。養母役のヴィッキーの熱演に圧倒され、父役のホアンの繊細な演技が心を打つ。「相手の立場に立って考えよう」というやさしさに貫かれる作り方にチャン監督の味が滲み出る。

¥4,212 2016年8月2日発売 BIBF-2967 | ASIN: B01EJ883QG
の・ようなもの のようなもの【DVD】
2011年に急逝した森田芳光監督のデビュー作『の・ようなもの』の35年後。下町の谷中、生真面目な落語家志ん田(松山ケンイチ)が師匠の志ん米(尾藤イサオ)に頼まれ、出て行った兄弟子の志ん魚(伊藤克信)を探す。落語を捨ててなんだか楽しそうに暮らしている志ん魚は高座に復帰するのか、それとも…? 杉山泰一(監督)と堀口正樹(脚本)の、森田作品を長く支えた二人が作る森田印の人間味が心に沁み、ゆかりの役者が勢ぞろいして懐かしさが増す。圧巻は、落研出身で森田に見初められ、『の・ようなもの』主演で映画デビューした伊藤の墓前で打つ落語。きっと森田監督もニコニコして聴いてますよね。

¥4,104 2016年7月29日発売 DABA-4999 | ASIN: B01EVBD7WQ
ピンクとグレー【DVD】
スター俳優、白木蓮吾が自殺を図り、旧い親友の河田大貴がそれを見つけた。センセーショナルな事件に不意を突かれ、いよいよその謎に迫るかと思った瞬間、まるで廻り舞台のようにがらりと景色が変わる。行定勲監督が人気グループNEWSの加藤シゲアキによる同名小説を大胆に脚色、観客が息を吞むミステリアスな青春映画を作り上げた。他にも、登場人物に前半と後半で別の人物を演じさせるという奇抜な試みもおもしろい。ドラマでも存在感を増してきた中島裕翔が映画初主演、さらに菅田将暉、夏帆、柳楽優弥、岸井ゆきのら若手実力組が盛り上げる。現役アイドルが暴く芸能界の裏側という鳴り物入り。ほんのり香る青臭さも若さの印ね。

¥4,104 2016年7月8日発売 DABA-4997 | ASIN: B01DIX5ZLE
スティーブ・ジョブズ【Blu-ray & DVD】
ダニー・ボイルとアーロン・ソーキン(『ソーシャル・ネットワーク』脚本)が、IT革命児スティーブ・ジョブズを描くフルスロットルセリフ劇。3つのパート、1984年Macintosh、88年NeXT Cube、98年iMacのそれぞれ発表会が軸になる。本人全面協力の伝記を原案に、緩急自在なリズム、360度アングル、まるで3Dプリンターのように見事に彼の実像を出力する手法がおもしろい。「hello」に拘る執拗さ、親友ウォズニアックの願いを聞き入れない徹底した信念、さらにジョブズと娘リサとの根深い確執と愛。天才で変人の称号に隠れる人間臭さに何か不思議と安堵もする。ファスベンダーとウィンスレットが好演。

¥4,309 2016年7月6日発売 GNXR-1265 | ASIN: B01BDIFMXW
マネーショート 華麗なる大逆転 華麗なる大逆転【Blu-ray & DVD】
ベストセラー作家マイケル・ルイス(『マネーボール』著者)の『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』に基づき、アダム・マッケイ(脚本・監督)が映画化。物語は原作タイトルの文字通り、2005年のリーマンショック前夜、市場の暴落を予見した4人のアウトロートレーダーたち、マイケル(クリスチャン・ベール)、マーク(スティーブ・カレル)、ジャレド(ライアン・ゴスリング)、ベン(ブラッド・ピット)の行動の顛末が描かれる。他に2人の若い投資家を媒介役に、難解な用語に満ちた金融世界と観客を繋ぎつつ、やがて崩壊が眼前に。いま妙にリアル、警告と虚しさを残す後味に背筋がゾワゾワする。ブラピは製作にも参加。

¥4,309 2016年7月6日発売 PJXF-1018 | ASIN: B01DITV62K
EDEN/エデン【DVD】
1992年のパリ。文学専攻の大学生ポールは仲間とDJユニット「Cheers」を組み、瞬く間にスターダムへ。イベントは盛況、最高にハッピーな毎日だが、ドラッグにはまってジリ貧となり……。ミア・ハンセン=ラヴが8歳上の兄スヴェンの脚本を映画化。ポールのモデルはDJで脚本家の彼自身で、2013年までの20年余の年月が描かれる。主役は時代を切り取る音楽。ほろ苦い青春譚と織り交ぜてクラブカルチャー史が映し出され、耳に馴染んだ魅惑的な楽曲とパーティーの喧騒、タバコの香りまで懐かくてわずかに胸が痛む。兄が大好きだったという監督の眼差しが温かく、兄妹の親密さも想像できるチャーミングな作品だ。

¥4,104 2016年7月6日発売 DZ0573 | ASIN: B01D4VFNH6
消えた声が、その名を呼ぶ【DVD】
1915年のオスマン・トルコ、妻子と引き離され、強制連行されたナザレット。喉を切られて声を失いながらも、九死に一生を得た彼は家族との再会を渇望して歩き出す……。ヒトラーがユダヤ人虐殺の手本にしたというアルメニア人虐殺に光を当て、家族愛と人間の葛藤を描いたファティ・アキン最新作。スコセッシ、ポランスキー、エゴヤンの協力を得て、三大陸に及ぶ物語を5ヶ国でロケ撮影、7年を費やして完成させた。トルコに出自を持つ監督にとって、トルコ政府がジェノサイドと認めない史実を扱うことは容易ではなかっただろう。悲哀と苦渋に満ちた作品だが、画や音楽が美しく、人間の愚行の狭間にかすかに煌めく希望の光が清々しい。

¥4,212 2016年7月2日発売 BIBF-2962 | ASIN: B01CZMQR0M
神様なんかくそくらえ【DVD】
2014年東京国際映画祭、サフディ兄弟監督、主演のアリエル・ホームズ、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズらと観客との熱い交流が印象に残る(グランプリ&最優秀監督賞受賞)。NYのストリートキッズたちのドラッグ依存の日常とヒリヒリした恋愛。路上生活をしていたアリエルの自伝『マッド・ラブ・イン・NYシティ』を原案として、アリエルを主人公ハーリーに、他にもホームレスの若者をキャスティグしてリアル感を増幅した。恋人イリヤを演じるケイレブの妖艶な痛さも効いている。ドキュメンタリーのような臨場感は、綿密な演出の下、固定カメラでクローズアップを多用して撮影されたというのも驚き。音楽もエンディングもクール!

¥4,104 2016年7月2日発売 TMSS-344 | ASIN: B01FLHK9NE
完全なるチェックメイト【DVD】
米ソ冷戦時代のチェス世界選手権。国家的バックアップでソ連が24年間タイトルを保持していたが、アメリカに彗星のように現れた天才、ボビー・フィッシャーによって歴史が塗り替えられようとしていた…。監督はエドワード・ズウィック、主演のトビー・マグワイアは製作、脚本、キャスティングと、すべてに関わった。羽生善治棋士の解説によるとフィッシャーはその「棋譜の芸術性の高さと数々の奇行エピソード」において、チェス界のモーツァルトのような存在だったと。特異な環境に育ち、常に150手先を読む習慣が身についたIQ187のプレーヤーが、陰謀論を信じて強迫観念にかられていく孤独な姿をマグワイアは鬼気迫る演技で魅せてくれる。

¥4,104 2016年7月2日発売 GADS-1275 | ASIN: B01DCZHQK6
飯舘村 放射能と帰村【DVD】
放射能に汚染され、全村避難を余儀なくされた飯舘村を土井敏邦監督が見つめたドキュメンタリー。可愛がって育てた牛たちを殺処分せざるを得ない酪農家の無念、子供たちの被ばくと差別の不安に苛まれる親たちの苦悩……、パレスチナを長年追い続けてきた監督ならではの視点で、人災で故郷を奪われた住民たちの姿を捉える。「心が汚染されたことがいちばん悲しい。政府にバカにされた」と語る住民の言葉が胸に刺さる。巨額を投資した除染はいったい誰のためか。3.11から5年が経過したが、なにも解決されず、こんな状況下で原発再稼働に舵を切ろうとする政治家たちや、彼らの支援者たちにも観てもらいたいものだ。

¥4,000 2016年3月28日発売 ISBN-13: 978-4811840901